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 導師との入浴


『ザップさん、乱暴すぎますぅ……』


 骨がなんかガダガタぬかしてやがる。しゃーしいな!


 俺はザップハウスに行きタブレットを操作して浴槽に温泉の湯を張る。脱衣所で服を脱いで棚の籠に入れる。


『キャッ!ザップさん。いきなり大胆過ぎますぅ……』


「四の五の抜かさずお前も脱げ!」


 なんかジタバタしている骨のメイド服を脱がして棚に入れる。生意気な事に下着まで付けていやがった。


『うう、恥ずかしいですぅ……』


 小柄な骨は、胸と股間辺りを隠している。何も隠れてねーぞ。骨の癖に恥じらいやがって、少し俺は苛ついた。


 骨の背骨を握って風呂場に向かう。ギザギザしてて握りやすい。


『きゃー、ザップさん、持ち方、持ち方!私、これでもレディなんですから』


「骨にレディもへったくれもあろかい!」


 ガダガタぬかすので、一喝してやる。


『うううっ……強引ですぅ……』


 骨は顔に手を当ててもじもじしてる。なんか嬉しそうだな。


 扉を開けて風呂場に入る。魔法の光に照らされて石で組んだ浴槽が目に入る。せっかくの露天風なのに空が見えないのはつまらないな。


 俺は迷わず収納に風呂と脱衣所以外の建物を入れる。


『きゃー、壁が……天井が……恥ずかし過ぎますぅ』


 骨は顔に手を当てて首をぶんぶん振っている。そんなに嬉しいのか?


「やっぱ風呂はこうでないとな。まずはお前から洗ってやる」


 俺は浴槽から手桶でお湯をとり椅子に座らせた骨にかけてやる。骨だけにお湯はほぼ素通りする。気を取り直して垢すりタオルで擦ってみる。なんか小骨にひっかかったりで上手くいかない。それに骨を1本1本洗うのは面倒くさすぎる。


『ザップさん、なんか見えてます。見えてます……』  


 骨は手で目を隠しているが、全く目隠しにはなって無さそうだ。


 面倒くさくなってきたので、骨には適当にお湯をかけて終了する。首の骨をひょいと掴んで骨を浴槽につける。


『ザップさんザップさん、なんか人集まって来てないですか?』


 見渡すと、近隣の住民とかが遠巻きに俺達を見ている。俺は手早く自分の体を洗うと温泉に浸かる。


「ふうっ」


 ああ、いい湯だ。


 俺は天にも昇る気持ちで辺りを見渡す。満天の星空の下、おぼろげな魔法の灯りが優しく辺りを照らしている。ん、なんか人増えてるな。その中の1人と目が合う。


「なんだぁ?お前達も入りたいのか?入りたい奴は脱衣所で脱いでこい」


 俺は大きく手を振ってやる。目が合った奴は大きく首を横に振ると逃げて行った。なんだぁ、意気地のない奴だな。


『全裸で衆人環視の中、男の人と入浴……うう、公開処刑だわ……プクプクプクッ』


 なんか骨は囁くと風呂の中に沈んで行った。骨のくせに恥ずかしがり屋だな。もともとは魔道都市の導師だったくせに。


 俺は肩まで浸かり、大きく息を吐き出して吸う。


 ん、なんか変な匂いがする。なんと言うかスープのような、うん、鶏ガラスープの匂いだ。こんな夜中に誰か鶏ガラを炊いているのか?酔狂な奴もいたもんだ。


 ガラッ!


 脱衣所の扉が開く。マイだ、右手にまだジョッキを持っている。


「ザップ!なにこれ、鶏ガラ?豚骨?え、人骨!ザップ、ジブルから出汁だし出てるわよ!」


「え、出汁?」


 なんか気持ち悪くなって俺は立ち上がる。


「ザップ…裸?ザップ何人前で裸になってるのよ!ばかぁ!」


「あうちっ!」 


 俺の頭にマイの投げたジョッキがクリーンヒットする。それはかなり固い筈の俺の防御を貫いた。たまらず後ろに倒れる。水しぶきを上げながら俺は浴槽に倒れ込んだ。


「痛いなぁ、ん、俺は何をしてたんだ?」


 気がつくと、僕は露天風呂に入っていた。辺りには人だかりが…


 これは飲みすぎたパターンだな…


「すみませんでした」


 僕は立ち上がり頭を下げる。


「ザップ、その前に服、服っ!」


 マイに言われて、慌てて収納から水着を出して着る。


 近隣住民の方々に頭を下げて、壁と天井を元通りにして、そのあとマイにこっぴどく叱られた。ジブルの事を忘れてて、温泉のお湯には鶏ガラ臭さが染み付いていた。もう一回入る前にお湯を総入れ替えする事になった。


 お酒は一杯まで!


 僕は心に強く誓った。


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