前夜の宴
『では、第1回ブラックドラゴンのスキルガチャ大会始めまーす!』
ジブルが唐揚げを手に立ち上がる。メイド服を着た骸骨。なんて言うかシュールだ。もう結果は見えているが、最後までやらせてやろう。
いつの間にか袋から出たジブルは辺りになじんでいる。そういえばこいつ、メイド服着て料理を運ぶ手伝いしてたような。まあ、人魚がいて妖精がいたくらいだから、今更スケルトンくらいなんちゃないか。
『いただきまーす』
ジブルが唐揚げに、噛みつく。当然噛み千切られた唐揚げは顎の下から落ちていく。それをアンがキャッチして食べる。
『ノーッ!食べられない!』
ジブルはテーブルに突っ伏す。その手の唐揚げをアンがじかに食べる。
「アンさんのスキルは、敏捷性上昇!」
人魚のナディアが歌うように言う。
「ところで、アンたんってドラゴンなんでしょ、共食いじゃないんですか?」
大神官シャリーが問いかける。なんかデジャヴだな。アンたんってお馬鹿っぽくてアンにはお似合いの呼び方だな。
「知恵の無いドラゴンは動物と一緒ですよ、人間だって猿の脳みそとか犬とか食べますよね」
アンがまたえげつない事を言う。それは間違いなく都市伝説の類いだと思うぞ。犬と言えば昔はヘルハウンドが主食だった僕はなんとも言えない。
「マイ、もう一杯だけエール貰ってもいいか?」
「しょうが無いわねー。もう一杯だけよ」
そう言いながら、マイはジョッキを一杯空ける。ん、マイって未成年じゃないのか?マイはかぱかぱお酒を飲んでるが、少し赤くなるだけだ。強いな羨ましい。
「はい、どうぞ」
僕はマリアさんからジョッキを受け取る。マリアさんは僕たちの宴会の面倒を終わるまで見てくれるそうだ。ありがたい。
『お酒も飲めないー』
見るとジブルが酒でテーブルを汚している。懲りない奴だ。それとも新手の宴会芸の一種なのか?
僕を始めみんなドラゴン唐揚げを口にしてノーマルのスキルを手に入れていく。ノーマルといえどもスキルを手に入れるのは普通至難の技なので、みんな喜んでいる。因みに僕の手に入れたスキルは安定の剛力だ。僕の剛力のスキルのレベルは幾つなんだろうか?僕のレベルは高いので、マイやナディアは詳しくは解らないそうだ。
僕たちは次々とテーブルの料理を空にしていく。特に冒険者4人娘は健啖でその勢いは止まらない。成長期だもんな。お酒を飲んでいるのは、僕とマイとアンとナディアで、アンは今日は食より飲みにはしっている。大丈夫か?店の酒なくなるんじゃないか?
『それでは、マイさんいってみましょう』
ジブルがマイを煽る。順番にドラゴン唐揚げを口にしていって、最後にマイの番がやって来た。僕はエールを一気に流し込む。なんか気持ち良くなってきたぞ。
「マイ、唐揚げ食べまーす!」
マイは唐揚げを掲げて口に入れる。もしかして酔ってるのか?
「おめでとうございます!マイさん大当たりです。スーパーレアスキル、腐食の息ゲットです!」
俺を含めみんなでマイに祝福の拍手を送る。良かったなマイ、念願のスキルを手に入れて。
「みなさん、ありがとうございます!けど、腐食の息って恥ずかしいわぁ、マイ、お嫁に行けなくなっちゃうわ……」
マイは真っ赤になって俯く。可愛い奴だな。
「安心しろマイ。俺がいるだろ。マイ眠いから寝るぞ。ジブルその前に約束どおり風呂に入れてやる!」
俺は立ち上がり、さらに真っ赤になったマイを引き寄せて軽く抱きしめて、ジブルの目穴に指をつっこんで持ち上げる。
『持ち方、持ち方……ザップさん、始めてはもっとロマンチックなのがいいですぅ』
「ザップ……けど、俺ザップは明日になったらすべて忘れてるのよね…」
ジブルとマイがなんかブツブツ言ってるが気にしない。
「ザップ、気の多い男だな。わらわはマイには負けんぞ」
なんかリナもブツブツ言ってる。
「みんな今日はありがとうな、じゃお休み!」
俺は明日に備えてとっとと風呂に入って寝る事にした。