前夜祭
「はい、おめでとうございます。スキルは剛力ですね!」
ナディアが帰るお客さんにスキル鑑定をしている。
「あ、お待たせしました。唐揚げ2セットですね」
僕は唐揚げの受け渡しをしている。5個セットで袋に入れた唐揚げをお客さんの買った数渡してお金を受け取っている。お店の方は満席になったらしばらく何もしなくて良くなるのだが、唐揚げはエンドレスだ。厨房から袋に入れて持ってきた唐揚げをどんどん売っていく。
アンジュとミカは行列整理、デルとルルとアルバイト2人が料理運び、マイとシャリーは唐揚げを揚げていて、調理長はどんどんステーキを焼いている。マリアさんとリナとアンはお客さんの案内や会計とか柔軟に動いている。
そして僕は延々と唐揚げの販売をしている。お食事はかなりの待ち時間なので、とにかく唐揚げは売れる。戦いの前になにしてるんだと言う感じだけど、マリアさんのためだ、頑張ろう。
「リナ、ちょっといいか?」
僕は少し手のあいたリナを呼ぶ。
「なんだザップ?」
「あとで、明け方夜襲をかける。夜中行くから今晩はうちに泊まってくれ」
「そうか、今晩、わらわは大人になるんだな。ザップ、いったん可愛い服をとりに帰ってもいいか?」
リナは真っ赤になって俯く。どうしたんだ?体調が良くないのか?
ん、なんで戦闘に可愛い服がいるんだ?
「戦いに行くんだぞ?」
いつもはビキニアーマーなのにどういう心境の変化なのか?
「やっぱり、そういう戦いの前って準備したいし。出来るだけ可愛くしたいし……」
戦いの前には身だしなみを整えるものなのか?女の子って訳解んないな。まあ、話は伝わったみたいだからいいか。
途切れる事のない、行列をどんどん捌いていく。
メニューをステーキにしぼっているので、お店の提供は早く、今日はお酒を飲む者も少なくてどんどんお店の中のお客さんは回転していく。会計して帰る時にナディアがスキル鑑定しているが、今の所剣呑なスキルは発生してないみたいだ。
終わる事のないような行列も終わりを告げ、最後のお客さんに唐揚げを渡す。結構遅い時間になることを覚悟していたけど、まだ、21時位だ。お店の事を考えてか、常連の酒飲みのお客さんが長居しなかったので、正直いつもより早い店じまいになった。
これからはお店を貸し切って、僕たちの前夜祭りだ。
ナディアの鑑定では、スーパーレアは1人で全能力上昇だったそうだ。腐食の息と火焔吐息は出なかったみたいで、少し安心だけどつまらない。まあ、テイクアウトの方が多かったから、今後に期待ではあるが。
ちなみに唐揚げを摘まんでいたマリアさんは敏捷性上昇、ステーキの味見をした調理長は炎熱耐性で2人とも仕事に役立つって喜んでいた。
テーブルにドラゴン料理を含む豪勢な料理が並び、今日だけは一杯だけという許可をマイに貰って僕はジョッキを手にする。
「それでは、今日の成功と明日の健闘を祈って、乾杯!」
僕たちは木で出来たジョッキを付き合わせて乾杯した。