荷物持ちの思惑
すみません、遅くなりました(T_T)
「ザップー、まってまって、方向違うから」
走り出した僕を、マイが追っかけてきた。え、方向違う?
最近、涙腺緩いからミネアの事を考えただけで少し潤んでしまう。多分走り出したから誰にも気付かれなかったはずだ。
「悪い、マイ、走りたい気分だったんだ」
「もう、もっと上手い言い訳した方がいいわよ。ザップ最近すぐ涙ぐむんだから……」
え、嘘、モロバレだったのか……
「なんの事だ?」
「無意味に走り出したら誰だって気付くわよ」
僕は頭を掻きながら、マイと歩き始めた。
「俺は俺のためにもうだれも失いたくはないんだ……」
「だからって、1人で戦うのも無しよ」
う、マイにはそれもばれていたのか?
いったんみんなを連れて戻って、魔道都市に夜襲をかけようと思っていたんだが、マイはどんだけ鋭いのだろう……
「ザップ、気が付いたら、ザップがラパンになってて、あたしたちがどんなに心配したのか忘れないでね。最後の戦いはみんなで絶対行きましょう。それで、傷ついたり、もしかして命を失ったとしても、誰1人後悔しないはずよ」
しばらく、僕は言葉が出なかった。2人の足音だけが聞こえる。
「解った。ありがとう」
それ以外の言葉は思いつかなかった。
マイが手を上げてみんなを呼ぶ。
そっか2人きりで話したかったのか。
情緒不安定で奇矯な行動をした自分を少し反省した。皆に気を使わせたみたいだな。
そういえば袋が喋らなかった。いつもは皆がさつなのに妙な所で気をつかってくるな。けど、ありがたいと思った。
「ありがとうな」
『何もしてないですよ』
軽く袋を小突いてやった。
出発の時には細心の注意を払って、ばれないように出て行こう。
僕は皆を自然な笑顔で迎える。
「走ったのは、アカエル大公の追撃があるかもしれないからだ。一端戻って今晩休んでしっかり準備してから明日の昼魔道都市アウフに向かう。と言うわけで走るぞ、リナ、ナビしてくれ」
僕はできるだけ大きな声を出した。多分聞き耳を立てているアカエル大公にも聞こえるように。
配下の黒竜を倒されて何もしてこないはずがない。何らかの手段で僕らを監視しているはずだ。
今夜、魔道都市に夜襲をかける。連れていくのは、リナ、シャリーのみの予定だ。2人には何も言わず、夜たたき起こして連れて行く。こういう時にミネアがいたら助かるのだが……
う、また涙腺が……
リナを先頭に僕たちは荒野を走る。足の遅いシャリーはマイ、寝てるラパンはアンが負ぶっている。
程なくしてワープポータルについて、その中に入って行った。