涙の再会
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「……ただいま……」
僕は小さく呟き、店に入る。
「いらっしゃいませ!」
マリアさんの元気のいい掛け声が聞こえる。僕自身は初めてここには来るが、ラパンの記憶と相まって、懐かしさに包まれる。
マリアさんは少し驚いたような顔で僕を見て、僕の後ろにいるマイ達を見ると、僕を見つめてにっこり微笑んだ。
「お帰りなさい。ラパン」
不覚にも僕の視界は涙でにじんでしまう。まさか、マリアさんの口からそんな言葉が出るなんて……
マリアさんは僕を見るのは初めてのはずだから、普通に接客されると思っていたのに……
僕は耐えられず駆け出した。
「ただいま!マリアさん!」
僕は泣いてるのをごまかすため、元気に挨拶すると。マリアさんを抱きしめた。ラパンの時は大きかったマリアさんが今は小さく感じる。年齢的に失礼かもしれないけど、お母さんってこんな感じなのかもな。
「相変わらず、ラパンちゃんって泣き虫ね」
マリアさんの優しい声が聞こえる。声がくぐもっている。
「マリアさんだって泣き虫だよ。僕は……」
泣いてないと言おうとするが、声にならない。溢れる涙が僕を邪魔する。
泣いてる。泣いてないなんて、今はどうでもいいや。
僕たちはしばらく抱き合っていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「そう、ラパンちゃんとミネアちゃんが……」
マリアさんの目に涙が浮かぶ。
お店で軽く食事をとって、お客さんが居なくなった昼過ぎ、2つテーブルを繋げて僕はマリアさんに今までの経緯を話した。
「マリアさん、俺にはラパンだった時の記憶はあります。けど、遅くなりましたけど、俺の名はザップ。ザップ・グッドフェローです。あと、あちらはラファ、魔道都市のお姫様です」
僕は椅子にもたれて眠っているラファを指さす。
「ザップさん、ラパンにはお世話になりました。ありがとうございます」
マリアさんは頭を下げる。何言ってるんだ。感謝してもしきれないのは僕の方なのに。
「マリアさん、頭を上げて下さい。こちらこそ、ラパンを助けてくれて本当に本当にありがとうございます」
僕は深々と頭をさげる。
「ザップさんこそ、頭を上げて下さい。ザップさんは、ラパンじゃ無いのね………」
頭を上げると、マリアさんの顔には影がある。僕は何て言えばいいのか解らない。
「ラパンちゃんは、優しい子でいつも少しおどおどしてた。ザップさんの目にはラパンちゃんになかった力があるわ。けど、ラパンちゃんと同じ優しい目。ザップさんの中には今もラパンちゃんがいるのね」
不覚にも少し涙腺が緩む。そうだ。ラパンは僕の中にいる。
バタン!
「ザップ!ザップ!ザップー!」
店にけたたましい声が響き渡る。
「帰って来ると思ってたぞ!」
入り口には金のビキニアーマーの美少女が立っている。自称北の魔王のリナだ。その後ろから、冒険者の戦士のアンジュと魔法使いのルルが入って来た。