タワーにて
「辺りには、なんの気配もしないです」
最後尾のデルが口を開く。転移魔法陣の先は薄暗いなにもない石造りの部屋だった。少しカビ臭い。しっかり掃除して欲しいものだ。
それにしてもデルが一緒にいて良かった。索敵能力は本当に役立つ。
「解った。ありがとうデル」
美人で面倒見がよくて何でも器用にこなす。あと百発百中の投擲能力。僕のパーティーにヘッドハンティングするか?
「どうしたのザップ?デルをジロジロ見て」
マイが少し顔をしかめて、僕の顔を覗き込んてくる。なんかやたらマイが絡んでくるな。
「いや、うちにも野伏や盗賊が欲しいなと思ってな」
「そうね、魔道士、神官も欲しいわね」
マイのいうとおり、魔法職の仲間も欲しい。特に今回痛感した。
「あ、あたしで良ければ。ずっとお供します!」
シャリーがマイの手をひっしと掴む。なぜマイなんだ?
こいつ聖教国の大神官だよな、勝手にそんな事決めて大丈夫なのか?政治問題にならなければいいが。ま、猿の身代わりを置いてるらしいから、このまま借りパクしてしまうのもいいな。
『魔道士なら、魔道ギルドの導師の私がいるじゃないですか』
髑髏が囁く。結構そういうのが苦手じゃない僕でも正直ゾワゾワする。
「けど、お前、今ほとんど魔法使えないんだろ?」
さっき話してるときに二つしか魔法使えないって言ってたよな。せめて、なんか攻撃手段を手に入れて欲しい。
『遠視の魔法ならもうじきいけますよ。けど、この魔法の欠点は、意識を壁とかを貫通して飛ばして行くのですが、その時、本体が無防備になるのですよ。生身の時にはなんかイタズラされそうで使いにくかったのですが、今なら安心して使えます』
そう言うとジブルは顎をカタカタ鳴らす。だから怖いんだって!けど、誰もジブルを持ちたがらない…
『タワー内部にはもう誰も居ないみたいですね。ここは1階の奥の部屋だと思われます』
僕は部屋を出ようと扉のノブに手をかけるが開かない。
『魔法の鍵がかかってますね。どうもセキュリティが発動してるみたいです。多分幾つも鍵かかってますよ。ギルドの認識票が無いと空かないですね……』
「ザップ、叩き壊す?」
マイが問いかけて来る。
「マイ、何でも壊すのは良くないな。もっとスマートに行こうじゃないか。デル、上の階にも人居ないか?」
僕はゆっくりと話す。脳筋はよろしくないな。
「気配はしないです」
長い耳をピクピクさせながら、デルが答える。
「まあ、人が居た時はそん時だ」
僕はタワー全てを収納に入れてやる。
ん、体が宙に投げ出される。遙か下に地上が見える。
「おい、ジブル、1階って言ったよな!」
『すみませんっ、間違えましたー!』
「「「キャアー!」」」
僕たちは地上目がけて落下していった。