迷宮脱出
「グゥオオオオオオーッ!」
ラファを優しく横たえて、自分のハンマーを手にし隣の部屋に行くと、想像通り黒竜がいた。
馬鹿の1つ覚えの状態異常効果のある咆哮をあげると、僕を目の端に捉え向かって来る。
僕はポータルを出し入れして収納の調子をみる。絶好調だ。
ドラゴンはその大きな口を開けると僕に向かって炎渦巻く黒煙を吐く。
「いただきます!」
熱も含んだ腐食の息を余す事なく収納に入れていく。これってなんの役にたつのだろうか?威嚇や脅し?なんかの醗酵?うん、使う事無さそうだ。
十分にブレスをいただいたので、ひと思いにとどめを刺してやる。苦しまないように眉間をハンマーで打ち抜いて絶命させてやり、鋭利な斧で首筋を切って血抜きをする。
本当は何かに吊してしっかり血を抜きたい所だけどいいものが無いので、今度森かなんかで続きはする事にしてドラゴン君を収納にしまう。
『ザップ様…ドラゴンをまるで家畜を倒すかのように…』
ジブルのしゃれこうべが囁く。ん、まだおきてたのか?
「あいつ食えるのかな?」
「毒をもつ生き物は美味しいっていいますよね」
僕にデルにが答える。つい何も考えずドラゴンをぶっ倒してしまったが、せっかくだからデルやシャリーのレベリングに使えば良かった。
「ジブル、まだドラゴンは湧くのか?」
『多分、エネルギーのチャージ具合から見るとあと10日はかかると思います』
「遅いなじゃあ放置するしか無いな」
『え、召喚魔方陣、壊さないのですか?』
「せっかく黒竜が湧くのにもったいないだろ」
『それでは地上に黒竜が…』
「え、このでかぶつ、ここから出られないだろ、体がつかえて。けど、地上に出てるんだよな」
『多分、この部屋に転移魔方陣があるんだと思います。それを壊せばいいのでは?』
僕たちはジブルに見つけてもらった大部屋に隠してあった転移魔方陣を削って消して無効化した。
「ザップ、そろそろここを出ないと、迷宮では魔物が大量発生してるんじゃない?」
「そうだな、さすがに全部の召喚魔方陣を破壊するのは難しいな。ジブル、今すぐ地上に戻れるか?」
『そうですね、転移魔方陣を使えば行けると思いますけど、繋がってるのはタワーと迷宮入り口、どっちに行きますか?』
僕は少し迷う。
「タワーだ、タワーに行く!」
どのみち迷宮都市の魔道士ギルド本部があるタワーには行くつもりなので、危険かもしれないけどそこに転移する事にした。
研究施設に戻ると、ジブルの頭以外の骨を袋に入れて、ラファはシャリーが負ぶる。ジブルの言うとおりにコントロールタッチパネルをいじると魔方陣の1つが光輝き僕たちはその中に飛び込んだ。