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第二十六話 荷物持ち奮戦する


 僕は荷物持ちだ。戦闘職では決して無い。


 レベルアップで身体能力が上がって、やっとミノタウロスと戦えてるにすぎない。

 生まれてこの方、剣術、武術、その手のものとは無縁で、生き延びるために振るい続けたハンマーと斧の経験則があるだけだ。

 

 今までの苦楽を共にしたハンマーを強く握る。これは最初に倒したミノタウロスが持ってたものだ。


 僕は決して強くない。敵に切りつけられ殴られながらも、相打ちでハンマーを敵の頭に叩き込み活路を切り開いてきた。


 策など何もない。僕は駆け出し、まずは横薙ぎにハンマーを振るう。受けられても多少のダメージを与える事が出来るし、避けられたら、反動を利用し回り加速しもう一撃を加えるか、強引に振り上げて上から叩きつけるかの二択を、状況に応じて使い分けられる。


 ゴスッ!


 僕は後ろに吹っ飛ばされた。何が起こったのか解らない。何度か転げ回り立ち上がる。胸が痛む。ミノタウロス王は片足上げている。ハンマーが当たる前に蹴り飛ばされたのか。

 目の前に大きな影が現れる。ミノタウロス王は斧を振り上げ力任せに振り下ろす。


 ガッ!


 僕は避けながら前に出て、体重を乗せた一撃をミノタウロス王の腹に叩き込む。まるで地面を殴ったみたいだ。軽く腕に痺れが走る。丸太のような太い足が僕を蹴り飛ばす。けど、思ったより痛みが無い。ただ僕を押し返すためのあまり威力のない蹴りだった。





 同じだ!


 ミノタウロス王と僕は。




 こざかしい技術は無く細かい事は無視して、ただ互いに力任せの一撃を敵に叩き込む。ミノタウロス王はその強靱な肉体を頼み、僕はエリクサーに頼む。


 一撃で決まる!


 互いに軽い攻撃は体で受け、力の限りの一撃を振るい続ける。僕たちは渾身の一撃をすんでの所でかわし続ける。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ミノタウロス王は、片方の角は折れ、体の至る所に火傷やあざがある。悔しいほどタフな奴だ。


 僕はと言うと、エリクサーのおかげで傷一つ無いが、スタミナは限界を超えている。しかも収納の中のものは全て出し尽くした。次に一撃食らったらもう回復のすべはない。


 けど、やる事は一つのみ。


 何も考えず、両手でハンマーを振り上げる。


 ミノタウロス王は片足を引き、斧を後ろに引き全力でそれを構える。


 単純だ!


 僕の一撃がミノタウロス王を吹っ飛ばしたら僕の勝ち!


 ミノタウロス王がそれに耐えて斧を振り切ったら奴の勝ちだ!


 全ての力を込めてハンマーを振り下ろす。



 ゴスッ!



 しくじったか? ハンマーが捉えたのは奴の左肩だ!


 ガッ!


 斧の一撃は僕の一撃のせいで軌道を逸らされ、僕の腿にあたる。とっさに身を引いたが骨まで届いた感触がある。


 ミノタウロス王はその場に崩れ落ちる。


 やったのか?


 けど、この怪我はまずい。足が切れかけている。血が止まらない。けど、隣の部屋まで行けばエリクサーがある。


 僕はハンマーを手放し、傷を押さえて少しでも出血を押さえようとしながら、足を引きずり進む。痛いと言うより熱い。まるで足を炎で焼かれてるみたいだ。


 ズシャッ!


 僕は力が抜け倒れる。扉まであと数歩だというのに……

 

 残りの力を振り絞り這ってすすむ。


 ゴツン!


 ゴツン! ゴツン!


 ハンマーで地を殴るような音が聞こえる。


 見るとミノタウロス王だ。固い蹄が大地を叩いている。


 左肩はだらりと下がり、右手で斧を引きずりながら、一歩一歩踏みしめて、こちらに向かっている。



 あと少し!



 あと少し、扉をくぐれば僕の勝ちだ!


 力が入らない。必死で地面を掻く。


 扉に手が触れる。あとは立ち上がって開くだけだ。


 巨大な影が僕に覆いかぶさってくる。足音が止まる。


 見るとミノタウロス王が小刻みに震えながら右手で巨大な斧を振り上げている。


 僕にはそれを防ぐ手段がもうない。


 無慈悲に僕に巨大な斧が振り下ろされる。


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