導師の受難
少し変更致しました。よろしくお願いします。
「お前、導師ジブルなのか、どうし、いや何が起こったんだ?」
僕は駄洒落になりそうな所をどうにか堪えた。間違いなく彼女?にはなんか不幸な事が起こったはず。それにたいしては不謹慎過ぎるだろう。
「あわわわっ、ほ、本当にジブルなの?」
マイがさらに僕にしがみつく。ほんっとうにマイはアンデッドが苦手みたいだ。
「ああ、多分ジブルだろう。この街で俺の名を知ってる者はそうそういないし、もし敵だとしても弱すぎるしな」
少し失礼な事を言ったかもしれないが、こいつも大概失礼だから問題ないだろう。
「ごめんなさいね、アンデッドには知り合いいないから、少し苦手なのよ」
マイは僕の影からスケルトンに話しかける。
『あの、あまりお気になされなくても結構ですよ。決して死んだって訳では無いですし』
導師ジブルと名乗った小さいスケルトンはまたおかしな事を言う。どこをどう見て動く骨が生きているように見えるだろうか?
『あの、出来るだけ簡単に言いますので、私の話を聞いて下さい』
そう言うと、ジブルを名乗る骨は囁き始めた。
話を要約すると、アカエル大公はここの魔道士ギルドのタワーで生物融合の魔法を研究していた。迷宮攻略の拠点としてたこのフロアに研究施設を作り、ここに迷宮のエネルギーを利用した二つの生き物を合体させる魔方陣を作ったそうだ。
それにより、大公は自分自身と黒竜を融合させて、強い力を手に入れている。
当然、人と何かの融合は魔道士ギルドでは禁忌とされていて、大公はそれを破った形になる。
あのあと捕まったジブルは研究の一環として、アンデッドと融合させられたけど、死んだふりして逃げ出した。
けど、戦闘能力が無きに等しいのでここら辺をうろついていて、激しい戦闘音を聞きつけて『遠視』の魔法で僕らを確認して近づいてきたそうだ。
『それでですね、あと、私、発作的に生きているものが憎たらしくてしょうが無くなるんですよ、その時はよろしくお願いします。ちなみに使える魔法は、この“風の囁き”と“遠視”だけです』
よろしくといわれても、なんかポンコツに磨きがかかったような……
『それとですね、なんていうか、裸でうろついていているみたいでめっちゃ恥ずかしいのですよ』
ジブルは自分の胸とお股を隠す。骨だから透け透けだけど。
「まあ、確かに実際裸でうろついてる訳だけど、骨なんでいいんじゃないか?」
僕はジブルをまじまじと見つめる。顔はしゃれこうべだし、あとも骨だ。
『キャッ、そんなに見つめないで下さい。恥ずかしいですぅ』
なんか骨がもじもじしている。なんか殴りたくなるけど我慢する。
「もう、ザップー、女の子に対して失礼よ」
「イテッ!」
マイが僕の背中をつねる。スケルトンに性別があるのか?
「しょうが無いな、これでも着ろ」
恒例のミノタウロスの腰巻きをジブルの胸と腰に巻いてやる。ちなみに恥ずかしがるからデルが着せてくれた。
「それと、言うの遅くなったけど、ありがとうな。まあ、安心しろ、絶対に元に戻してやるから。それまでは面倒見てやるよ」
ジブルの魔法がなかったら、僕も大公に捕まってただろう。その感謝がまだだった。
ジブルの頭をぽんぽんしてやる。顎がカチカチ鳴ってカスタネットみたいだ。
『え、それってもしかしてプロポーズですか?私ハーレムはちょっと…』
「んな訳あるかーっ!誰がいつハーレムを作った!」
「ザップ!あたしが居ない間に……」
マイが僕から飛び退く。マイに潔白を証明して、ジブルに近況を説明しつつ、研究施設へと移動した。
けど、冷静に自分の環境を見ると、周りには女の子しかいないな、こりゃ傍から見たらハーレムに見えるわ……