代わり果てた姿
コツン、コツン。
遠くから何か音が聞こえる。
コツン、コツン。
下に向かう階段からだ。
「ザップ、何か来るわ」
抱えているマイが頭を上げて猫耳をピクピクさせている。やっぱ、起きてるじゃん。
「マイ、降ろしてもいいか?」
「だめ、もう少し抱っこしてて」
果たして荷物みたいに小脇に抱えられてるのを抱っこというのであろうか?
「しょうがないな、もうしばらくだぞ」
もしもの時にはすぐ戦闘体勢に入れるので、しばらくはマイを抱える事にした。
「デル、飛び道具構えとけ」
「ザップ兄様、タブレットが出て来ないです」
「え?」
僕はタブレットを出して管理者名簿を見る。ん、マイだけだ。おかしいな、みんな登録したはずなのに、バグか?
タブレットをデルに渡して登録するように言う。
「ザップ兄様、今まで入れたものが入って無いです!」
収納のリストを見ると、ラパンが入れたものが入って無い。どういう事だ?
どこに消えたんだ?
もしかしたら、ラパンが消えた時にラパンが収納に入れたりものは無くなったのかも知れない。と言うことは急がないと、リナ達別働隊も収納が使えなくなってるはずだ。
コツン、コツン。
「ザップ兄様、雑魚モンスターが一体近づいて来ます」
デルが口を開く。索敵能力か。
あ、そうだ何かが階段を上って来てたんだった。僕は身構える。
『ザップ様、とりあえずぶん殴ってもよろしいですか』
風にのって囁きが聞こえる。
目の前には子供位の背丈のスケルトンが現れた。小さいだけでなく、その骨も細く軽く握るだけで折れそうだ。来るなり頭を下げて訳の解らん事をほざいている。
「この生意気なアンデッド成仏させてもいいですか?」
シャリーが僕の方を見る。
「待て、少し様子を見よう」
なんか、頭に引っかかる。
「なんか、めっちゃ弱そうですね、深層でよく生き延びてこれましたね」
デルは腕を組んでスケルトンを眺めている。
『憎い、生きている者が憎い。すみません。行きます!』
小スケルトンは囁きながら駆け寄って来る。なんか内股気味でトロくて気持ち悪い。
「ひっ!」
僕の脇でマイが身を竦める。
「きゃー、ザップこわいーっ!」
マイは横から僕に抱きついてくる。んー、怖いかなあ?僕は全く脅威を感じない。まあ、マイの格好が冒険者スタイルで体の感触が解らないのが少し残念だ。
コツコツコツコツ!
スケルトンは僕にネコパンチを心ゆくまで浴びせると少し下がり肩で息をつく。当然ノーダメだ。ていうかこいつ息してないだろ。
『ふぅ。やっと破壊衝動が収まりました。すみません、お見苦しい所を。姿が変わったので解らないかもしれないので、一応また自己紹介させていただきます。私は魔道都市アウフの魔道士ギルド本部で導師兼評議員をしておりました、ジブルと申します。よろしくお願い致します』
小スケルトンは慇懃に頭を下げる。
「「ジブル!」」
僕とマイの叫び声が辺りに響き渡った。