決断
「まずいわ!まずいんじゃないかしら!」
僕の頭にガシッと妖精ミネアがしがみつく。
「行けワイバーン!」
ミネアの術で僕たちの目の前に現れた大きな翼竜が一直線にドラゴンに飛んで行く。そして黒竜に体当たりをかます。
ドーーン!
それでも黒竜の勢いは殺せず、その着地で部屋内に大きな振動が走る。
ビシッ!
ザップの柱から大きな音が聞こえる。まずい崩れる。
「グゴゴゴゴゴッ!」
黒竜のブレスが幻術の翼竜を一撃で黒い靄と化す。
ガラガラッ!
ザップの柱が崩れ始める。マイさんは振り返る。
「ザーップ!」
マイさんは叫び、落ちてくる石化したザップに向かい走る。
「グゥオオオオオオオオオオオーッ!」
ドラゴンは咆哮を上げる。それのもたらす恐慌効果で、僕は心臓を鷲掴みにされたような感覚を覚え、駆ける足がふらつく。
マイさんを見ると、僕同様ふらふら前に進んでいる。けど、このままでは落ちてくるザップには追いつけない。
「ザーップ!」
マイさんの悲痛な叫びが響く。
「シャリーミサイル!」
デルさんの声が響き、矢のように飛んできたシャリーちゃんがザップの石像にぶち当たりそれを掴んで飛んでいく。シャリーちゃんナイス!
「ゴオオオオオオオーッ!」
轟音と共にドラゴンに背を向けたマイさんにドラゴンブレスにより生じた黒煙が迫る。横に飛びマイさんはかわすが右手右足が巻き込まれて、ドロドロと溶け去る。
マイさんに向かって黒竜が襲いかかる。なんとかその攻撃をしのいでいるがこのままではヤバい。
「マイ姉様!」
デルさんの叫びが聞こえる。
「マイ姉様!ガッ!」
ザップの石像を置いて近づいたシャリーちゃんがドラゴンの尾で弾き飛ばされる。
「ウガッ!」
抵抗虚しく、マイさんはドラゴンの前足で踏みつけられる。大丈夫か?
「やるわよ、ラパン、ザップを復活させるわ、10秒でドラゴンを倒して。ラパン、あなたはザップでもラファでもない。消えるかも知れないけどいい?」
妖精が僕に問いかける。聞くまでもない!
「いいに決まってるだろ!頼むミネアみんなを助けたい」
「わかったわ、ラパン、あたしはずっとあなたのそばにいるから……」
なんか妖精にしてはしんみりな事を言うと、妖精は呪文の詠唱に入った。
「マイ姉様を離せ!」
デルさんが斧でドラゴンの前足に斬りかかるが軽く傷つけただけだ。ドラゴンはぐったりとしたマイさんを口に咥えると、デルさんを前足で切り裂いた。デルさんは血を流してながら吹っ飛ばされる。
「ガッ!」
ドラゴンに噛まれたマイさんが血を吐く。まずい、早く治療しないと!
「ミネア!まだなのか!」
僕は叫ぶ。
「完成よ。世界を覆う魔力よ消え失せろ!」
妖精は飛びだして、その体から強い白い光が漏れ始める。
「魔法なき世界」
妖精から放たれた光が部屋の中央に収束する。そして光が膨れ上がり周りのものを呑み込み始めた。