守るもののある戦い
「マイ姉様、ザップさんの柱が!」
シャリーちゃんが叫ぶ。
ザップが刺さった石の柱を見ると、それに無数のヒビが入っていってる。さっきのドラゴンの転倒で柱にダメージが入ったのだろう。
「ザーップ!」
マイさんは柱の方に向かう。
「まだだ、マイ姉様!」
デルさんが大声を上げるが、マイさんは柱に走り出す。
僕はドラゴンに向かって走り出す。
首の無いドラゴンの体はそのまま蛇のように這って進み、首の切断された所が落とされた首に近づく。
「させるかっ!」
デルさんの方から飛んで来た槍が数本ドラゴンの頭に刺さる。
ドラゴンの胴体は首の切断面にその先をあててみるみるうちにくつっき、首を高々と掲げる。
「グゥオオオオオオオオオオオーッ!」
ドラゴンは咆哮を上げる。僕たちは体が急に重くなる。
「祝福が破られました!」
シャリーちゃんの声が聞こえる。
ドラゴンの下にたどり着いた僕はみるみる再生する足に渾身の一撃を叩き込む。
ドゴン!
バギッ!
派手な音をたててハンマーはドラゴンの足にのめり込むが、衝撃に耐えられずその柄が真ん中からへし折れる。
ガッ!
バランスを崩した僕はその足に弾き飛ばされる。ダメージはあまり無いが僕は宙を舞い遠くへ飛んでいく。
何とか見えたのは、石柱の下にたどり着いたマイさんと、それを凝視しているほぼ五体の癒えた黒竜。自分へのとどめより石柱を優先したマイさんの行動を理解したのかも……
僕はくるりと回って両足と片手をついて上手く着地する。そしてすぐに駆け出す。
「聖爆撃」
シャリーちゃんの声が響き、ドラゴンに光の球が命中する。黒竜の首筋が爆発し大きく抉れるがすぐに肉が盛り上がっていく。
黒竜はマイさんの方に驀進して回りその長い尾をしならせる。その尾の軌道にはマイさんとその後ろにはザップの石柱がある。
ドゴゴッ!
重い音が辺りを震わせる。長くて大きい黒竜の尾をマイさんは両手の斧の腹で受け止めている。ドラゴンは尾を引きマイさんの方を向くとその口を開ける。
「ゴゴゴゴゴオーッ!」
ドムッ!
耳を裂く呼吸音がするが、ドラゴンの顔に巨大な何かがぶつかりブレスの軌道が逸れる。マイさんが切り落としたドラゴンの足だ。デルさんか?
「マイ姉様、ザップ兄様は砕けてもどうにか出来る筈です。まずはドラゴン倒しましょう」
デルさんの声が響く。
「嫌よ!ザップはあたしが守る!」
マイさんは前に出て両手の斧でドラゴンを攻撃する。ドラゴンは明らかにザップの石柱を狙っていて、それを防ぎながら闘うマイさんの動きは明らかに先程よりも精細を欠く。
「聖爆撃」
ドゴッ!
シャリーちゃんの魔法がドラゴンの前脚を穿つ。
ガッ!
デルさんの投擲した槍がドラゴンの目に刺さる。
その一瞬の隙を突いて、マイさんの斧が踊り狂う。
「グルルルルッ」
両手を切り落とされたドラゴンは体を上げると大きく吸い込み大きく後ろに跳び上がる。まずい、これはまずいのでは?
ドラゴンをザップから遠ざけるためか、マイさんは前に進んでいる。そして、さらに追撃すべく前に出る。デルさんとシャリーちゃんは間接攻撃のため距離を取っている。僕はエンゲージまで、あと数秒間はかかる。うかつだった。まずはザップを収納に確保するべきだった。
「衝撃だ!衝撃で柱が崩れる!」
僕は叫びながらザップの柱を目指しひた走る。