英雄の片腕の本気
「散開して!デルは後方から投擲、ラパンとシャリーは左右に分かれて攪乱して、あたしは正面から打ち合う!」
マイさんの指示通り動く。僕は左、シャリーちゃんは右に行く。
デカイ、近づくと黒竜の巨大さがよくわかる。黒竜は大きく息を吸う。
「ゴオオオオオオオーッ」
黒竜の口の中で黒煙が渦巻き、マイさん向かって放たれる。マイさんはかわして、ブレスがあたった地面がドロドロと溶ける。腐食の息、あいつを食らうと終わる。人として……
ギィーーン!
ブレスをかわしたマイさんが急加速してドラゴンの前足に切りつける。火花が散りドラゴンの前足は切り落とされる。
「神よ、我らに仇なす者に神罰を」
シャリーちゃんのよく通る声が響きわたる。
「神の呪い」
シャリーちゃんから放たれた黒い靄が黒竜を包み込む。
前足を絶たれた黒竜はバランスを崩し倒れそうになるが、みるみる新しく生えた前足で大地を踏みしめ堪える。高速再生、厄介だな。
「でえーぃ!」
気合いと共にデルさんが槍を投げる。収納から出したのだろう。一直線に黒竜の目に突き刺さる。惜しい、過たずドラゴンの右目を穿つが、脳までは達さなかったみたいだ。
ドラゴンは前足の爪で顔の右目を搔きむしる。槍ごと右目を掻き出して、また、みるみるうちに再生していく。
トロールだ。トロール並みの再生能力だ。もしかして巨大な頭を一撃で叩き潰さないと倒せないのか?どうやったらそんなこと出来るのだろうか……
「フフッ、素晴らしいドラゴンね、素材が倍取れるわ」
マイさんは振り返り軽く笑うと足取り軽く駆け出す。
「久しぶりに本気で戦えるわ。再生するなら、それ以上に攻撃あるのみ!」
マイさんは地面に斧を突き立てると、タブレットを出して横に飛びドラゴンの一撃をかわし、もう一本斧を出してタブレットを戻す。最初の斧の所に戻りそれを取り、両手に斧を構える。
「うおおおおーっ!」
マイさんは吠えると僕には手の動きが見えない程の速さで斧を振るう。
ドガガガガガガガガガッ!
ドラゴンの攻撃をかわしつつ轟音を上げドラゴンを切り刻む。左前足、右前足、胴体、手当たり次第切り刻み、ドラゴンの再生が追いつかず、たまらずドラゴンは後ろ足で立ち上がる。ドラゴンは大きく息を吸い込むが、微塵の躊躇いもなくマイさんは前に出てドラゴンの後ろ左足を刻む。ドラゴンは傾く体を起用に尻尾で支えるが、それも即座に切り落とされる。みるみる再生するのだが、マイさんの刻むスピードの方が早い。ドラゴンはバランスを崩し大地に打っ伏せる。マイさんが飛び退くのが見える。
「もらったーっ!」
気合い一閃、ドラゴンの首が打ち落とされた。