世界の名を冠する魔法
「ところで、どうやったらあんなに回転しても目が回らないの?」
回転打撃でミノタウロスをたおしたシャリーちゃんに聞いてみる。
「少しコツがあって、回る先の方を見るようにしたら、目が回りにくくはなるわよ」
シャリーちゃんは肩で息をつきながら答えてくれる。けど、そのコツってどこで習ったんだろう。神官って回ったりするものなのか?
今はもうシャリーちゃんは十二分に強いのではないだろうか?
ずっとシャリーちゃんの戦いばかりで正直飽きてきた。
「マイ姉様、もうシャリーは十分強いのではないでしょうか?」
お、デルさんナイス、同じ意見みたいだ。
「そうね、これからは最速で先に進みましょう」
デルさんのナビに従いながら、僕たちは先に進む。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「多分、次がフロアボスの部屋よ」
「少し休憩してから行きましょう」
デルさんにマイさんが提案する。もう、僕たちは40層にいる。目の前には立派な扉があり、扉の前には石碑がある。
『汝の力を示せ』
石碑には古代語でそう書いてある。デルさんとシャリーちゃんは勉強したので読めて、マイさんはこのような簡単なものなら読めるそうだ。何故か僕も古代語は読める。この迷宮では、フロアボスの部屋の前には石碑が立ってた。面倒くさいのでスルーしてたけど、よく考えると親切だ。力無いパーティーだったらここで引き返せる。
みんなその場に座り込んで、水と、マイさんがタブレットを使って収納から出した、熱々のから揚げを摘まむ。そのから揚げは絶品で食べると、なんか力がみなぎってくるような気がするが、恐ろしいので素材には触れないでおくことにする。
僕はこれから先の行動で解らないことがあるので、みんなに聞いてみることにした。
「確認したい事があるんだけど……」
みんなから揚げを食べる手を止めて僕を見る。妖精も飛びながら食べているが、明らかにから揚げは大きい。自分の頭より大きいものがどこに入っていくのだろう?
「石化したザップを回収したら、シャリーちゃんに呪いを解いてもらう。そこまでは解る。けど、僕とラファは入れ替わっている訳で、それはどうやって戻すの?」
「あたしが一応魔法解除は使えるけど、やってみないと解らないや」
シャリーちゃんは答えるとから揚げにまた夢中になる。戦い前なのにそんなに気に入ったのか?
「あ、シャリーちゃんは剛力ね」
マイさんが呟く。やっぱりドラゴン肉か!
「それは最悪どうにかなるわ」
最近浮いてるだけで、役にたたず影が薄い妖精ミネアが話し始める。
「この世の中には『世界』の名前を冠する魔法が存在するわ。世界に変革をもたらす事の出来る、絶対的な効果を及ぼす事の出来る魔法。あたしはそのうちの一つを使う事が出来る。それで何とかはなるわ」
「え、じゃあ、あたしたちの石化も治せたの?」
マイさんが妖精をじっと見る。
「うん、シャリーが居なかったら使ったかもしれない。けど、どうにか使えるだけだし、長い詠唱とそれなりの代償がいるのよ」
「そっか、じゃあ咄嗟には無理なのね」
マイさんはため息をつく。
「それに、世界魔法は禁呪」
デルさんが身を乗り出してくる。
「エルフの中では使えるのは長老くらいだけど、使ったのは光と闇の戦いの時だけらしいわ。ミネア、出来ればそれは使わない方がいいわ」
デルさんが妖精に強い視線を送る。
「解ってるわよ、危険って事くらい」
ミネアがふざけない。それにまともに会話している。それほど危険なものなのだろう。
そのあと少し休憩して、僕らは扉を開ける。
やっぱり、ザップに戻る方法はあるのか……
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