第二十五話 荷物持ち囲まれる
僕は音を出来るだけたてないようにして歩く。両手でハンマーを握りしめて。
少しの物音でも聞き漏らさないように耳をそばだてる。
左の壁に武器を振り回すのに差し支えない距離で寄り添っていく。
この喉がひりつくような緊張感、懐かしい。けど出来れば御免被りたい。
広間の半分より前くらいで、遠くの灯りがちらつくのに気付く。
何かが近寄って来る。
目を凝らす。
ミノタウロスだ!
いかん、数が多い!
不味い、このままでは囲まれる。左手以外の全方向からミノタウロスが近づいてくる。
おぼろげに確認しただけでも10体はいるのではないか?
最初の遭遇を思い出す。最初の1体の次には多数のミノタウロスが僕に襲いかかってきたんだった。よく考えたら囲まれて当たり前だ。何故もっと慎重に進まなかったのだろうか……
瞬時に僕は出来るだけ多数を相手しなくていいように後ろに向かって駆け出す。ミノタウロスたちも走り僕に群がってくる。
振り返ってハンマーを振るい、まずは1体、2体なぎ倒す。起き上がって来る前に頭部にハンマーを振り下ろしとどめを刺す。
前方から2体同時に襲いかかってくる。どちらかはかわせない。咄嗟にドラゴンブレスを放つ。後続も巻き込み数体は焼き尽くした。
いける! 複数を同時に相手しなければなんとかなる。
出来るだけ壁に寄り、動きながら1体づつ倒していく。
どうしてもかわしきれない時にはドラゴンブレスを使う。もうあとブレスは2発分しかない。
突進してくるミノタウロスに試しにヘルハウンドブレスを連打する。ミノタウロスの突進は止まらず僕は避けきれず、ぶちかまされ、大きく後ろに吹っ飛ばされる。すぐに受け身をとって立ち上がるが、同時にミノタウロスが数体襲いかかってくる。やむなくドラゴンブレスで一掃する。残す所あと一発か……
辺りを見渡すと、もう動くものはいなくなっていた。幾つかのミノタウロスの死骸が燃えている。
終わったのか?
ゴツン!
ゴツン!
前方からハンマーを打ち付けるような音がする。その方を見ると今までより一回り大きなミノタウロスだ。
多分ミノタウロス王だ。
ゴウッ!
僕は出し惜しみなくドラゴンブレスを放つが、ミノタウロスは高速で大きく退きかわす。大きいのに素早い!
瞬時に近づき大きな斧が迫る。どうにかハンマーでそれを受けるが激しく床を滑り勢いを殺せず転倒してしまう。なんて馬鹿力なんだ。
最後のドラゴンブレスをかわされた……
最初に戦った時は不意打ちだったから上手くいったにすぎなかったんだ……
奥の手を失って、倒せるのだろうか?
倒すしかない!
僕は起き上がって心を奮い立たせてハンマーを構えた。