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 大神官の成長


「神よ、この者を供物として捧げますので、新たな加護を求めます」


 シャリーちゃんの澄んだ祈りの声が部屋に響く。なんかさっきからシャリーちゃんは戦いの前に祈るようになった。自分が神官という事を思い出したのだろうか。それにしては物騒な聖句だ。


 嬉しそうにトロールの群れに飛び込んで行って、ものの数秒で決着をつける。自分の頭くらいあるトゲのついた鉄球を振り回す様は、もはや神官というよりは野人バーバリアン狂戦士バーサーカーにしか見えない。


「神よ、新たな贄を捧げます。我に新たな加護を与え給え」


 シャリーちゃんは膝をつき手を合わせ敬虔な祈りを捧げる。可憐な美少女が目を閉じて祈る様はまるで1幅の絵画みたいで見る者を厳粛な気持ちにさせる事だろう。

 さっき嬉々として凶器を振るっていた人と同一人物には全く見えない。

 けど、普通こういう時って冥福を祈る的な事を言うのではないか?


「シャリーちゃん、ちょっとここであなたの成長を確かめたいと思うわ」


 マイさんがすっくとシャリーちゃんの前に立つ。


「マイ、何処の成長を確かめるのかしら?百合、百合なのね、シャリーあんたもぼーっとしてないでさっさと脱ぐのよ!」


 妖精がシャリーちゃんにまとわりついて服を脱がそうとする。


「キャハハッ、ミネア、止めて、くすぐったいよ」


 妖精はシャリーちゃんをくすぐっている。力では勝てないので、脱力させてから脱がす気なのか?


「やめーい、ミネアそんなお約束の絡みはいいから、退屈ならラパンちゃんとあそんでなさい」


 マイさんはミネアの羽を蝶を捕まえるように摘まむと、僕の方に放り投げる。


「ラパーン遊んでー!」


 妖精は一直線に僕の胸に飛び込んで来たので受け止めてやる。


「うーん、シャリーの勝ち!」


「ほっとけ!」


 全く失礼な奴だ。まだ僕の胸は成長途中のはず。いや、成長途中なんだ。


「じゃあ、シャリーちゃん、そのザップハンマーであたしに全力で攻撃してきて、好きな所狙っていいわ、けど、頭や顔は擦ったら不機嫌になるかも」


 マイさん、それって顔や頭は狙うなと言ってるようなものだよ。ただ、好きな所狙えって言葉が格好いいから言いたかったんだろうな。


「では行きます!」


 シャリーちゃんはハンマーを振り上げる。うわ、脳筋なのか戦闘狂なのか?躊躇いが全くない。


「ていやぁ!」


 シャリーちゃんはじぶんの左斜め前に出ながらハンマーを振り下ろす。カウンターを取られないようにマイさんの利き手の背に回る形だ。


 ドゴン!


 ハンマーが地面にのめり込み、マイさんはその上に立っている。


 強い強すぎる……


 正確には何が起こったのかわからないけど、何とか確認出来たのは、マイさんはハンマーをすれすれでかわして瞬時に宙返りをして、足でハンマーを流したみたいだ。口にすると簡単だけど、度胸、技術、力、全てが高い水準でないと出来ない離れ業だ。


「本当の所は早くザップを回収して迷宮を出たい所だけど、シャリーちゃんは強くなったけど、まだまだあたしたちと連携するには力不足ね、デル、ここからフロアの全ての敵を倒しながら進むわ。シャリーちゃんにはもっともっと強くなってもらうわ!」


「はい、マイ姉様。強くなったと思ったけど、まだまだですね……慢心せずに精進します」


 一瞬の攻防で、明確な主従関係が出来たみたいだ。


 デルさんが索敵して、トロールを刈りながら1層また1層と進んでいく。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ここのフロアボスはボストロル。ボスと言うだけあって、全ての能力がトロールを凌駕しているわ。大丈夫だとおもうけど、もしもの時のために、一応みんな戦える準備はしていて」


 ようやく30層のフロアボスの部屋の前にたどり着いた。マイさんの言葉に僕も一応予備の武器を手にする。


「マイ姉様、努力のかいあって、新しい奇跡を神から賜りました。多分皆さんの出番はないと思いますよ!」 


 自信たっぷりに言い放つと、シャリーちゃんはボス部屋の扉を蹴破り飛び込んで行った。



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