大神官とキングスライム
「無理無理無理無理!」
シャリーちゃんはフロアボスを見るなり逃げだそうとする。
僕たちの目の前には10層のフロアボスのキングスライムがフルフルしている。
逃げ出したシャリーちゃんは襟元をデルさんに掴まれている。
「あんたたち馬鹿じゃないの?あんなのか弱い女の子のあたしが倒せるわけないじゃないの!」
シャリーちゃんはジタバタしているが、力士であるデルさんには手も足もでないみたいだ。
これまでの階層では、手探りで最短ルートを模索しながら出会ったスライムだけシャリーちゃんに倒させて来たのだが、正直強くなってるみたいには見えない。まぁ、当然か最弱な魔物のスライムだから。
「シャリーちゃん、喜んで、金色よゴールデンキングスライムよ、一気に強くなれるわ」
マイさんがシャリーちゃんににっこりと微笑む。
「金色も金○もあろかい!喜べるかボケェ!あないなデカイものあたしが叩いても毛ほどもびくともせんじゃろが!」
ん、シャリーちゃん今なんか下品な言葉が聞こえたような。
「マイ姉様、マイ姉様に『ボケ』と言ったあげく、あまつさえ下品な言葉を放ちました。このガキ折檻してもよろしいでしょうか?」
ニコニコしているデルさんの額には青筋がたっている。怖ぇ!
「まあ、あたしは気にしてないからほどほどにね」
マイさんも笑顔で答えるが、その額にも青筋が……
気にしてないって言うのは全くの嘘だな。
合掌……
「はうっ!はうっ!はうっ!はうっ!」
僕は人がお尻ぺんぺんされてるのを初めて見た。かなり屈辱的な姿だな。
シャリーちゃんはデルさんにがっちり担がれてお尻ぺんぺんされている。
下品は禁止!
下品は禁止!
僕は心に刻み込む。シャリーちゃんを見ると涙を浮かべている。ああはなりたくない……
「すびばぜんでした…マイお姉様、デルお姉様シャリーはにどと下品なことはいいまぜん。グズッ」
シャリーちゃんはお尻を押さえながら2人に頭を下げる。かなり可哀想だ……明日は我が身にならないようにしよう!
ちなみにゴールデンキングスライムは遠くでフルフルしている。近づかないと襲いかかって来ないのだろう。
「ラパン、ハンマーを握ったまま柄をシャリーに差しだして」
「はい、畏まりました」
僕はデルさんに言われる通りにする。さっきの恐怖から言葉がおかしくなってしまった。
「シャリー、握る」
「はい、畏まりました」
シャリーちゃんは素直に僕の差しだした柄を握る。両手で握った瞬間、デルさんがシャリーちゃんの手を紐で柄にくくりつけるやいなや柄を掴み走りだしシャリーちゃんがたなびきデルさんはそれをゴールデンキングスライムに向けて槍の投擲みたいに投げつける。
「シャリーミサイル!」
デルさんは声を張る。
ドゴムッ!
シャリーミサイルはゴールデンキングスライムを一直線に突き抜け、そのまま壁に突き刺さる。大丈夫なのか?
僕はシャリーちゃんに駆け寄ろうとするが、少し壁の所で動かなかったシャリーちゃんがすっくと立ち上がる。
「何しやがる!死ぬじゃろがボケェ!」
シャリーちゃんはハンマーを大上段に構えて駆け寄って来る。成功だ。今のでかなりハンマーを扱えるくらいレベルアップしたみたいだ。
そのあと、乱心したシャリーちゃんは取り押さえられてまたぺんぺんされていた。