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 最後の壁ファーストウォール


「今度こそ、中に入るためには、乗り越えて行くしかないようね」


 デルさんが腕を組んで、佇んでいる。心なしかその口元は緩んでいて、少し嬉しそうに見える。


 僕たちは今、迷宮都市の迷宮から溢れる魔物を押しとどめるための最後の壁、ファーストウォールの門があったと思われる所にいる。大通りを歩いて来たので、ここに扉があったと思われるのだが、目の前は崖崩れのあとみたいに、大小の岩が乱雑に積み重なっていて、前に進む事が出来ない。


「私に任せて、こういう時こそ野伏レンジャーのスキルが役立つのよ!」


 デルさんは矢の後ろにロープがついたボウガンを構えている。多分僕の収納に準備していて、タブレットで出したのだろう。


「テイッ!」


 デルさんは片膝をついてボウガンを天に向けて構え、矢を放つ。トリガーを引くだけなので、何処も力が入る所はないので気合いは必要ないと思うが、ただ格好つけたかったのだろう。


 矢は縄がついたまま一直線に飛んで行き、崩落している所より上の城壁に突き刺さる。デルさんは満足そうに頷く。多分デルさんはこれがしたかったんだ。壁の前で今までも困った振りをしててそれを簡単に解決して格好つけたかったのだろう。


「じゃあ、みんな、壁を乗り越えるわよ。まずはあたしから行くわ」


 デルさんはするするとロープを登って行く。


「デル、デル!」


 マイさんが呼ぶけど聞こえなかったようで、見る見る小さくなっていき、ボウガンの矢が刺さった所から次のボウガンを城壁の最上部に放っているように見える。心なしか動きがリズミカルで楽しんでいるように見える。


「あー、まあいいわほっときましょう。ラパンちゃんここの岩と中にあると思われる扉を全て収納に入れて」


「うん」


 僕はマイさんに言われた通りに、前に進みながら全てを収納にしまっていく。数秒後には僕たちの前には扉のない綺麗になった城門が現れる。それをすたすた歩いてくぐって行く。正直我ながら恐ろしい。もし僕が犯罪者ならやりたい放題だと思う。


「はぁ、はぁ……」


 僕たちが門をくぐり抜けた時に、上からデルさんがロープを伝って降りて来る。正直こんな短時間でそびえ立つ城壁を登り降りしたのは凄いと思う。全力を尽くしたのか息も絶え絶えだ。


「そうよね、ラパンちゃんのスキルを使ったら一発だよね」


 少しデルさんは寂しそうだ。


「デルさん凄いと思うよ、めっちゃ早かった。野伏レンジャーって素晴らしいのですね」


 僕は素直にデルさんは凄いと思う。


「けど、あたしにはさっきの無理ね」


 シャリーちゃんが余計な一言を言う。


「デル、努力は認めるわ」


 やはりマイさんは、いい人だな。


「けど、全くの徒労よね!」


 そして、極悪妖精ミネアがとどめを刺す。


 僕は今収納に入れた物を出して元通りの崩落した門に戻す。


 そびえ立つ迷宮都市の象徴の、魔道ギルドの建物のタワー、冒険者ギルドの飾りのない建物、墓石チュームストーンに向かって歩いていく僕たちの後ろを、デルさんがトボトボとついてくる。



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