第二十三話 荷物持ち実力を試す
「これから先は1人で戦う」
僕はマイを手で制して歩き始める。
地下49層に降りて、通路を進み、最初の部屋に差しかかった。
この階層はミノタウロスだけが発生して、部屋からは出てこない。逃げやすいという利点はあるが、やり過ごして奥に行くのにはミノタウロスの戦闘能力の高さ故に難しい。
ここしばらくでマイは強くはなったが、まだまだここでは足手まといだ。僕にはマイを守りながら戦う余裕は無い。僕が1人でミノタウロスを倒し、後でマイを迎えにいく事にする。
収納の中を確認すると、あと残りのドラゴンブレスは6発、これには出来るだけ頼りたくないが、危険になったら使う事になるだろう。
最初の扉を開けると、中央に1体のミノタウロスがいる。片手に巨大な斧を握り、その腕はまるで大木のようだ。全身の筋肉は盛り上がり節くれだった筋が浮かんで見える。それは戦う事その事のみを追求してきた肉体だ。
僕はここを出てからも様々な魔物とかなりの数戦ってきた。
強くなれたのだろうか?
強くなれたはずだ!
今まで培った自分の実力を試してみる事にする。
「ミノタウロス……本当にミノタウロスだわ。ザップ、戻りましょう。あんなの絶対無理よ!」
マイが僕のマントを引っぱる。僕はゆっくりと自分のハンマーを指差す。
「これはなんだ?」
「あ、ミノタウロス王のハンマー!」
聡いマイは気づいたみたいだ。僕がこれまでミノタウロスを倒してきたのを。しかもその王の名を冠する者さえも。
決して実力で倒した訳ではないが、これで、マイも安心するだろう。
マイは掴んでいたマントを放す。
「ザップ、頑張ってね!」
マイはそう言うと後ろに下がる。
僕はマイを一瞥してハンマーを握り、ミノタウロスに向かって駆け出す。
ミノタウロスは僕を見ると腰を落とし斧を両手で構えた。
まずは踏み込み、様子見にハンマーで軽く横から凪ぐ。
ガキィーーーン!
金属の擦れる音が響く。
当然ミノタウロスは反応し斧の腹でそれを受ける。そんな簡単にはいかないか。
「え!」
思ったより手に残る衝撃は少なく、僕のハンマーはミノタウロスの斧を軽く弾き飛ばした。
ミノタウロスの頭ががら空きになる。思いっきり踏み込み、ハンマーの反動を押さえ込み振り上げてその頭に叩き込む。
確かな手応えがあり、ミノタウロスは後ろに崩れ落ちる。
そして動かなくなった。
え、倒したのか?
今までは、不意打ちや、ブレスとかで弱らせたのをなんとか倒してきた。
信じられない……
僕が真っ向勝負で、実力でミノタウロスを倒した!
「ウオオオオオオーッ!」
僕は感極まり、堪らず、両手を上げて叫び声をあげた!