金策交渉
「大金貨100枚、そんなお金どうやって工面すれば……」
大金貨100なんて僕には無理だ。その前に記憶の中では大金貨を手にした事さえない。
僕はリナちゃんとアンジュさんを見る。リナちゃんは自称魔王だからお金もってるかもしれないし、アンジュさんたちはかなり強い冒険者だからもしかしたらお金をもってるかも?
「残念ながら、わらわはお金はあまりもたんのだ」
本当に残念そうにリナちゃんは目を伏せる。
「うちが説明するわ」
人魚のナディアがタライの中からこっちを見る。相変わらず。愛らしい。
「リナ様は魔王で北の国の王ではありますが、内政は他の者に一任してて、月々のお小遣いは小金貨1枚です。ようはうちやラパンちゃんより貧乏ですわ」
ウェイトレスより貧乏な魔王ってどうかと思う。
「わらわが強引に掻き集めたら、大金貨100枚位すぐに集まるとは思うが収穫期まではまだまだだから民に負担を与える事になるしな……お金……お金……そうだナディア、四天王を全員召集せよ、戦、戦だ!」
リナちゃんはブツブツ言ってたけど、最後あたりにはいつもの大声に変わった。
「承知いたしました。全員集合ですね、久しぶりに暴れてもいいのですね」
ナディアがギラギラした目でリナちゃんを見る。
「ちょっと待ったー!」
シャリーちゃんがリナちゃんの前に立つ。
「あんた、何する気なの? どうやってお金を集める気なの?」
「なに、簡単な事じゃ、魔王領の南にある東方諸国連合の商業都市にお金を貰いに行くだけだ。あそこはお金を沢山もってるからな。聖教国の大神官に治療費を払うからお金をよこせと言って、軽くもんで山の1つや2つぶっ飛ばしてやったら気前よく払ってくれるよ」
シャリーちゃんの問いに、事もなさげにリナちゃんが答える。それはいかんやろ、ゆすりだろ。
「だめー!そんな事したら国際問題になるわ!」
シャリーちゃんが必死で止めようとする。ま、当然だ。
「せめて、聖教国の名前は出さないで、迷宮から溢れた魔物から守ってやるっていう用心棒代にしましょう!」
む、シャリーちゃんは自分が巻き込まれなければいいのか?
なかなかくず人間だな……
「まあ、うちらは理由なんてどうでもいいからそれでいきましょ」
花のような笑顔でナディアが言う。いかん、こいつら頭が蝶々メガ盛りのお花畑というのを忘れてた。
「待った、待った。リナちゃん、お金は僕らでなんとかするよ、アンジュさんなんかいい考えないの?」
リナちゃんは残念そうな顔をする。あと少しで僕が原因で戦乱が巻き起こる所だった。
そもそもリナちゃんに頼ろうと思ったのが間違いだった。
良識人と思われるアンジュさん達冒険者4人組の方がまともな方法を考えてくれるだろう。
「悪いなラパン、少し前までなら王都でドラゴンの素材を売ったお金で貸してやる事も出来たのだが、しばらく豪遊したおかげで大金貨100枚はだせないよ」
アンジュさんは頭をポリポリ掻く。す、凄い少し前まで大金貨100枚もってたのか。さすが一流の冒険者。
「ん、ドラゴン? アンジュさん、ドラゴンの素材ってどれ位の値段で売れたんですか?」
「そうだな、だいたい大金貨200枚くらいだったかな」
アンジュさんは首を捻りながら答える。ん、待った、と言うことは少しの期間で大金貨100枚浪費したって事なのか?
あ、この人も間違いなく良識が欠如している……
「そうね、それなら今ラパンの収納にはボロボロだけどドラゴンの死体が1体入ってるわ。これを売った大金貨100枚位にはなると思うからシャリーにはこれを報酬代わりにすると言うことでどうかなー?」
ルルさんはそう言うとシャリーを見る。
「ドラゴン!それいいわね、けど現物を見たいわ」
シャリーの食いつきはいい感じだ。こりゃいけるんじゃ?
さすがに街中でドラゴンの死体をだしたら大問題間違い無しなので、僕たちは街から出る事にした。