ドラゴンと荷物持ち
な、何が起こったんだ?
体全体にヌメヌメしたものがまとわりつく。
もしかして喰われたのか?
チャンスだ!
僕は今までかき集めた武器系のものを思い浮かべる。デルさんがまめな人で良かった。何とか使えそうなゴブリンやオークのもってた金属武器から、リザードマンが持ってた結構上質な武器、それにミノタウロス達が持っていた高品質な武器など沢山ある。
それをのべつ幕なし収納から引きずり出す。それらはもりもり辺りを押し広げ、明かりがさす。
やっぱり僕がいたのはドラゴンの口の中だった。並んだ鋭い歯が見える。
危ねー、あれに挟まれてたら大怪我だった。
「張り裂けろ、この食いしん坊野郎!」
僕は罵倒して、残りのありったけの武器を出して、外に飛び出す。これで、ドラゴンの頭は破裂したはずだ。
僕は上空に投げ出され、くるりと身を翻して着地する。武器をだした時に傷つけたのか、至る所にドラゴンの唾液がしみてヒリヒリというかビリビリする。頭にエリクサーのポータルを思い浮かべて自分の体にエリクサーを振りかける。一瞬にして傷は完治するが、なんか体がヌメヌメする。速く水浴びしたい。
「ラパンちゃん!」
「大丈夫かラパン!」
ルルさんとデルさんが駆け寄って来る。
「大丈夫だよ」
僕は手を上げて応え、ドラゴンを見上げる。
「クェーッ!クェーッ!」
ドラゴンは奇声をあげながら、頭を前後に揺らしている。その口はまるで卵を呑み込んだ蛇、ほお袋にいっぱい食べ物を入れたリスみたいに膨れている。顎は外れてそうだけど、張り裂けてはいない。さすがドラゴン、思いのほか頑丈だな。
「あっ………」
ドラゴンの口から角の生えた石像の頭がはみ出している。なんて言うか、シュールだ。
「……………」
やってもた、焦っていたから石になったアンさんも出してしまったみたいだ……
まあ、アンさんなんで大丈夫だろう。ドラゴンだし。
ドラゴンは嘔吐くように頭を振るが武器は上手く刺さって居るのかほとんど口から出て来ない。
「ルルさん、デルさん、行くよっ!」
僕は気を取り直してハンマーを構えてドラゴンへ向かう。ルルさんとデルさんもそれに続く。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「しゃーっ!ぶっ倒したぞー!」
僕は勝利の雄叫びをあげ、ハンマーを突き上げる。
目の前にはドラゴンが巨体を横たえている。それを一度しっかりと眺めたあと収納にしまう。傍らに金色のポーションが落ちていたので、それも収納にしまう。
ドラゴンはドラゴンなだけあって、尋常じゃなく耐久力が強かった。
ドラゴンの口は塞がれていたので、ブレスを封じる事は出来たけど、鋭い鉤爪、強靱な尻尾が僕たちを苦しめた。
最初に頭を狙われたのを警戒されて、跳び上がっても避けられたりはたかれたりで、頭を狙うのは諦めて、地道に足や尾から攻めていった。
ドラゴンの爪や鱗以外の傷は徐々に癒えていくので、僕たちは休むことなく攻めたてた。
僕たちの傷はエリクサーで回復させる事が出来たけど、徐々に疲労は蓄積していった。
どれだけの時間が経ったのかは分からないけど、かなりの鱗を叩き割り、尻尾も切り落とし、3本の足が動かなくなるまで叩き続け、ようやく頭が下がった所に渾身の一撃を加えて今に至る。
ルルさんとデルさんは大地に横たわっている。さっきまで、武器を杖に立っていたんだけど、精も根も尽き果てたのだろう。
僕も疲れ過ぎた。地面に転がり手足を投げ出す。とりあえず、しばらく動きたくない。
いつの間にか眠ってしまったみたいだ。