第二十二話 荷物持ち武器鑑定してもらう
「ザップ! ゴールド! ゴールド! ゴールド!」
うるさい奴だ。聞こえている。
今は地下48層の先程の部屋で、ドロップ品探しと、素材がまだ使えるヘルハウンドの仕分け作業をしている。
マイは奥で小瓶を掲げてぴょんぴょん跳びはねて感動してる。
「ザップ! 焦げてるけど、これケルベロスだよ! 頭3つあったみたいだわ!」
「そうか」
「ザップ! 今度はザップが飲んで!」
マイは駆けて来て、僕の目の前に金色のポーションを突き出す。
「いらん、甘すぎる」
「そういう問題じゃないわよ。あたし、結構強くなったし」
「うぬぼれるな。飲め」
マイはしばらく僕を凝視する。
「えっ、無理無理、こんな貴重なもの無理よ」
「無理じゃない。無理矢理飲ませるぞ」
「…………」
マイは黙りこくる。
「ありがとう! じゃ本当に、本当に飲むわね!」
マイは瓶の栓を抜き、一気に中身を飲み干す。
「美味しい! 最高!」
マイは微笑む。女の子って何でこんなに甘いものが好きなんだろう。
まだ使えるヘルハウンドをどんどん収納に入れる。
マイが近寄ってきて、地面に投げ出してる僕のハンマーを見る。
「ザップのハンマー、触ってもいい?」
「ああ」
マイはハンマーを片手で持ち上げ目の前にかざす。あれを片手で持てるようになったのか。強くなったな。
「ミノタウロス王のハンマー+3! 特殊効果、取得経験値30%アップ、自己復元!」
「どうした?」
「頭に言葉が流れ込んできたの」
マイはハンマーを大事そうに置くと、今度は自分の斧を掲げる。
「ミノタウロスの斧、高品質! え、なにこれ!」
「なんで、わかった?」
「え、本当にミノタウロスのなの?」
マイはその場に座り黙りこくる。
僕はせっせと獲物をしまう。
「もしかして、鑑定のスキル? さっきのゴールデンポーションは鑑定のスキルポーションだったの?」
そうか、鑑定か。僕には『はずれ』だな。マイは喜んでるみたいだから、まあいいだろう。
「よかったな」
僕が飲まなくてよかった。鑑定のスキルなど戦闘の役にたたないし、腹の足しにもならない。
「よかったなって、ザップ! 鑑定よ! ずっと一生、仕事にあぶれる事もないし、鑑定のスキルポーションは一番レアで値段がつかないものよ!」
聞いた事がある。鑑定はレアスキルで、冒険者ギルドでも役所や商家でも重宝されるという。
「いらんな」
「あたしが鑑定……あたしが鑑定……」
マイはぶつぶつ呟いている。落ち着いたら僕のハンマーには特殊効果がついてるみたいだからどういうものか聞いてみよう。
「行くぞ」
やる事は終わったので、地下49層への階段へと向かう。
色々ご意見いたたいていた回なので、少し説明させていただきます。
ザップさんはいわゆる脳筋の方なので、今は自分の戦闘能力を上げる事しか考えて無いです。鑑定って間違いなく戦闘にも生活にも役立つのにですね。それに気付くのはもっと後の事になります。
読んでいただきありがとうございます。
2023.9.4 マイがゴールド飲む前のリアクションが薄いので、少し追加しました。