野蛮隊の冒険 勝負飯 3
「拙者は茶を所望する」
女戦士はパタンと見てたメニューを閉じる。さっきまで激昂してたのが嘘のように冷静だ。
「オイラ、拙者って初めて聞いたよ」
パムが女戦士に瞬時に近づいて、あざとい上目づかいを放っている。女戦士は少し腰が引けてる。パムの接近に対応できなかったんだろう。
「ねぇねぇ、拙者ってどういう意味なのー? セッ〇スが上手い者の略なの? それとも近くでぶっかけるって意味ー? オイラ、子供だからわからなーい」
近くでぶっかける? 「接射」って書くのかなー?
女戦士は呆けたように一瞬顔が赤らんだが、表情を整える。
「小僧、拙者とはな、『つたないもの』と書く。己を謙遜してる言葉だ」
「えー、お姉さん、つたないのー? ならオイラが手取り足取り腰取りおしえたげるよー」
ぐぅーきゅるるっ。
大きい腹の音だなー、女戦士か?
「お姉さん、お腹減ってるんでしょ?」
「余計なお世話。戦の前に飯を食うなど言語道断」
「腹が減ったら戦はできぬって言うでしょー」
相手の男戦士がいきなり笑い始める。
「カーッカッカッカ。肝っ玉ちっちぇー奴だな。戦の前は飯を食わない? おめーとの決闘なんか戦でもなんでもねーよ。踊りのようなもんだ」
「そうだな。お前が踊るだけだがな」
女戦士は冷静。
「いーや。おめーが裸踊りするだけだ」
男戦士も笑ってる。
「そもそも、東の奴らは弱すぎんだよ。なんだー? その刀ってやつは。そんなんじゃ鎧に当たったら直ぐ折れて使いもんになんねーだろ。その板で作った鎧もチマチマしてて貧乏くさいんだよ」
「貴様、拙者の事はなんと言ってもいい。だが刀は武士の命! たたっ切る! 今ここでたたっ切ってやる」
挑発に弱いな、和国戦士に刀の悪口を言えば怒るってのは、ギルドでは常識だ。男戦士は知ってて煽ってる。先に武器を抜かせて正当防衛を主張したいんだろう。けど、なんでそんなに喧嘩したいんだ?
「上等だ! 行くぞお前たち」
二人とも立ち上がる。おいおい、男戦士、仲間も巻き込むつもりか? こすいなー。
「おい。ギルドで喧嘩は御法度だ」
二人に向かって歩いていく巨人。レリーフだ。騒ぎに気付いて降りてきてた。二メートルを超える身長に、トレーニングのお蔭かビショビショなタンクトップと短パンが素肌に貼り付いている。パンプアップした全身の筋肉を波打たせている。明らかに二人ともドン引きしている。
「おい、とりあえず座れ」
レリーフに言われるままに二人とも席につく。
「兄さん、強そうですね。名がある戦士なんじゃないですか?」
男戦士、手のひら返しはえーな。
「戦士? 私はそんな野蛮なものではない。深淵を覗く者、死霊魔術師だ」
「ざっ、戯れ言を。そんな立派な体した魔術師がいてたまるか」
女戦士が真っ当な事を言う。けど声は震えている。怖いなら黙ってればいいのに。
「ここにいる。筋肉は趣味だ」
ドヤりながらポージングしてる。
「おい、レリーフ。横入りするなよ。コイツらはオイラが面倒みてんだよ」
「パム、騒ぎを起こしそうになってたじゃないか」
「そんなのオイラがなんとかするさ。さっさとジムに戻れよ。コイツらは筋トレなんかしねーよ。決闘するんだよ」
「そうなのか?」
レリーフが二人を交互に見る。二人ともブンブン首を縦に振る。
「邪魔したな。筋肉に興味あるなら上にこい。面倒みてやる」
そう言うとレリーフは去って行った。筋トレの続きをするんだろう。
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