野蛮隊の冒険 勝負飯 1
「じゃ、今日はゆっくりしよう。たまにはそんな事もあるさ」
僕はミルク砂糖マシマシのコーヒーを口にする。ギルドのコーヒーは結構いい豆を使ってるらしいが、カフェオレ派の僕には、違いはわからない。
パムは眉間に皺を寄せて口を開く。
「ちょっとだけ、あとちょっとだけ待ちましょうよ。もしかしたら追加が貼られるかもしれませんし」
「無いな」
パムの言葉をレリーフが即否定する。僕もレリーフに賛成だ。
僕らは久しぶりに三人で集まって冒険に行くことにした。パムがうるさいからしぶしぶだ。朝から王都の冒険者ギルドの掲示板を物色してたのだが、あーでもないこーでもないってやってるうちに、他の冒険者たちがガンガン依頼票を持ってって、残ってるのは二束三文で誰でもできる雑用系しかない。栽培してるキノコの収穫とか、街のドブそうじとか、買い物代行とかだ。それらは王都が定める最低時給の仕事ばかりで、暇だから受けてもいいんだけど、僕らがやると新人の仕事を取る事になる。それで諦めてテーブルでぐだーってしている。
ごくまれに掲示板に追加の依頼が張り出される事もあるが、最近はかき入れ時で冒険者が活発に働いてるから魔物は順調に討伐されてるから、それは少ない。強いてあげるなら、薬草採取とかなら最近の品薄で追加されるかもしれない。けど、このメンバーは基本討伐しかしない事にしている。シティアドベンチャー系の依頼を受けようものなら、地獄が目に見えている。会話や情報収集とかでパムとレリーフを一般人に絡ませるのは見てる分には面白いが当事者になると笑えない。あと採取系だとコイツら真面目にしないもんな。飽きてすぐ違う事し始めやがる。子供かよ。まぁ、パムは見た目は子供だけど。
『野蛮隊』
それがこのトリオ名だけど、パムは頑なに『ちん〇こ野蛮隊』と言い張るし、レリーフは『筋肉野蛮隊』って言って譲らない。バカなのか? 小学校低学年じゃあるまいしわきまえろ。自分で名乗る分にはまあ構わないが、それで呼ばれる者の身になってみろ。それに、パム、受付嬢が声に出せない名前にすんじゃねーよ。なんかギルドってそんなとこ緩いんだよな。王国はなんだかんだでいろいろ厳しくない。まあ、それはいいとこであり、こういうとこでは悪いとこだ。帝国でそんな卑猥な言葉を連呼しようものなら、即、お縄だ。まあ、そういうとこが好きでパムもレリーフも王都に住んでるんだろう。レリーフはどこでも筋トレするけど、それは多分、帝都でやったら衛兵がすっとんで来るだろう。
「俺は上にいます。なんかあったら呼んでください」
レリーフはそう言うとテーブルを立つ。上って事はジムでトレーニングするんだろう。
もう少しでお昼だなー。
「やんのかゴラァ!」
真ん中くらいのテーブルで怒声が響く。おっ、喧嘩か? 最近ギルドじゃ見なくなったなー。
「多分よそ者ですねー」
パムがいつの間にか戻ってきてる。そしてキラキラした目でその声がした方を見てる。
「上等だ! やってやるよ」
立ち上がったのは女戦士。僕は即座に隣に座ったパムの腕を掴む。セクハラと言う名の仲裁を阻止した。パムの腰は浮いていた。
久々のメンツなので紹介で終わってしまいました(T_T)




