明日はハロウィン 後
「ご主人様、あれはなんですかねー」
アンが指差した先には顔を真っ白に塗った道化師のような格好の集団。なんだろう。知らねーな。それにしても、同じ格好の男は良く見た。三人に一人くらいはその格好なんじゃないか?
「あれね、人気の劇のヴィランよ」
マイが即座に答える。
「なんで同じ格好の奴が多いんだ」
みんなで同じ格好して、なんか服が被ったような気まずさは無いんだろうか? よく見ると細部は違うから打ち合わせしてる訳じゃなさそうだし。
「なんかね、あの仮装すると格好よく見えるらしいから、多分女の子と仲良くなるのが目的だと思うわ」
「そうか」
つまんない理由だな。仮装に何を求めてるんだ。同じなのが多い時点で、女子受け悪くなるんじゃないか? それにしても何気にマイは色々知ってる。まあ、良く友達と王都ブラしてるみたいだもんな。雑誌とかもよく読んでるし。んー、いかんな、お金に困ってる訳じゃないのに、僕はついつい冒険ばっかりしてる。もっと余裕もって色んな事もしないと。流行に疎すぎる。
僕たちは仮装してる人を見たりしながら、目的地に向かう。今日は王国主催のパーティーに向かってるとこだ。途中で魔術師ギルドに寄ってジブルと合流する。
ジブルは黒髪にリボンの少女魔法使いに扮していて手には箒を持っている。うん、可愛い。普通に少女みたいだ。目つき以外。
「ジブル、そもそもハロウィンってなんなんだ?」
「ああね。何回か言った気もするけど、西方では死んだ人の魂が帰ってくるって言われてて、それに見つからないように悪魔や魔物とかに仮装するようになって、今じゃ変わって仮装する日になってるのよ」
「ふーん。そうなのか」
まあ、要は仮装する日って事か。そうこうしてるうちに、パーティーがある迎賓館に着く。受付をして主賓に挨拶しに行く。
「よぉ、来てくれてありがとうな」
ポルトが僕の肩を叩く。今日は無礼講だ。警備はたくさんついてるが、今日のポルトは王様じゃない体だ。けど、お粗末な仮装だな。外にいた道化師のヴィランの格好してやがる。ダッサ。
「お前、もっとマシな格好無かったのか?」
「時間が無かったんだよ。俺は忙しいんだ。それより、お前、気合い入れすぎだろ」
「でしょ。何時間もかけてカボチャくり抜いてたのよ」
マイ、ポルトに近づいちゃダメだ。
「いやぁ、ゾンビのマイさんも素敵だなぁ」
マイとポルトの間に入る。こいつは何かと女性の手に触れようとするからな。コンプライアンスで豚箱に入ればいいのに。
「中身は茹でて私が食べたんですよ」
くり抜いたカボチャの中身は種ごと茹でてアンに食わせた。これも終わったら茹でて食わせる予定だ。
「アンさんも相変わらずお綺麗ですね」
ポルトは唯一アンにだけには敬語だ。お城壊された事あるからだろう。それを知ってからかアンには触ろうとしない。
「ジブルさんもすごいね。それ、魔法なの?」
なんとジブルは箒に跨がってフヨフヨ浮いている。
「そうよ。私は風の一族だから。どっからどうみても魔法少女でしょ」
「うん、いいねー。けど、ザップ、お前、リアリティを求めるのはいいが、気合い入れすぎだろ。ちょっとやり過ぎだと思うぞ」
「別に気合い入れた訳じゃない。ちょっと試しただけだ」
僕の格好は黒の全身タイツにリアルカボチャのジャックオーランタンだ。見た事がないもので考えると、カボチャのマスクをしてる奴は多いけど、本物のカボチャを被ってる奴はいない。僕は収納スキルを使うと、カボチャを割る事なく被る事ができる。けど、カボチャ臭いしベトベトして気持ち悪い。人がやらない事には理由がある。スライムの仮装しかり。
「まあ、ザップが楽しんでるみたいでよかった」
「ザップって、意外にイベント好きよね」
「ご主人様、それって被ったまま飲み食いできるんですか?」
アンの言葉に凍り付く。これ、口ちっちぇーや。ストローでなんか飲むのも一苦労だ。
そして、裏で衣替えをする事にした。やむを得ず、僕もポルトと同じ仮装でパーティーを楽しんだ。道化師の仮装、動きやすいし食べやすい。みんなやる訳だ。
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