迷宮の安全地帯
「フロアボスがいたって事はここ数日迷宮でここまで来た冒険者がいなかったって事よね」
僕が倒したゴブリンロードを見てデルさんが言う。
ここまでで、出会った冒険者は3組、すれちがったり、戦ってるのを見たりしたが、3組ともデルさんとルルさんを見たらすぐに挨拶をしてきた。
「やっぱり、少ないわね。今、王都では魔物討伐の依頼が多くてしかも報酬がいいから、ここに来る人少ないのかも。いつもだったら、ここまでは芋洗い状態だもんね。ここには結構来たけど、キングスライムとゴブリンロード両方いたのは始めてよ」
デルさんはそう言うと、ゴブリンロードの骸のそばに行くと屈んで何かを拾った。
「ハイヒールポーションよ、ここのドロップは武器か魔法薬で、高く売れる事が多いから人気の狩り場なのよ。29層までは比較的弱い魔物ばっかだし、詳しい地図も売ってて安全地帯もあるから、駆け出しからベテランまで暇があるときはここに来るんだけど、こういうのは始めてね」
さすが冒険者なだけあってデルさんは色々詳しい。僕はデルさんからポーションを受け取り収納に入れる。
「じゃ、安全地帯で休憩するわよ」
ルルさんに促されて、僕は2人について行く。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
安全地帯は泉のある広場で2組の冒険者がテントを張っていた。
「あ、デルさん、もしかしてロード倒してくれました?」
そのうちの1人の戦士風の男が声をかけてくる。
「私じゃないわ。この娘が倒したのよ」
「「おおーっ」」
冒険者たちがどよめく。
「へー、ガムラン達も強くなったじゃない。ゴブリンのパーティー倒せるようになったのね」
デルさんがガムランと呼ばれたさっきの冒険者に話しかける。
「はい、なんとかですがね。それで、お願いですが、俺たちにも豚を残してて欲しいのですよ。デルさんたちが通ったら死骸だけしか残らないんで、俺たちもレベルアップしたいんですよ」
「うん、解ったわ、ロードはさっき倒したから、あと3日後に復活すると思うわ。ここに居るって事は誰かがロード倒すの待ってたって事でしょ、25層までは、オーク倒さずに行くから頑張ってね」
「「おおーっ!」」
またどよめきが起こる。
「「ありがとうございます」」
ガムランさんとその仲間達。それともう一組のパーティーも僕達の所に来て頭を下げる。
「それで、こっちからもお願いがあるんだけど、教えて欲しいんだけど、なんでこんなに人が少ないの」
ルルさんが冒険者達に問いかける。
「それはですね、今、諸国連合との国境線の所の防衛の依頼がギルドに入ってまして、それが報酬が高いのですよ、まあ臨時の傭兵のような仕事ですが、期間中なにもなかったらなにもしないで飯つきでお金貰えるようなもんですからね。けど、もし戦いになったら何と戦うか解んないので、俺たちは安全にここで狩りをしてるわけです。そう、うまい話があるわけないですからね」
ガムランさんが答える。
僕達の関わっている事がこんな所にまで波及してるとは……
「それは、賢明ね。詳しい事は言えないけど、今は諸国連合に関わらない方がいいわ」
「助言ありがとうございます。そうします」
ガムランさんはルルさんに頭を下げると仲間達と自分のキャンプの方へ戻って行った。
僕達もデルさんの荷物から出しているように見せてテントを出す。その中で体を拭いて着替えて、ご飯を食べて休む事にした。
冒険者は男性しかいなかったけど、デルさんたちにちょっかいだすような馬鹿はいないらしい。
誰もいなかったら泉にはいったのにと、ルルさんは残念そうだった。
石の上に毛布を敷いただけで、固かったけど、疲れていた僕は2人に挟まれてぐっすり眠れた。