明日はハロウィン 前
「そもそもさ、なんなんだ、ハロウィンって」
街中で謎な仮装をしてる人々を見てつい呟く。
「ハロウィンはハロウィンですよ」
ドラゴン娘のアンがお菓子がいっぱい入った袋片手に答える。ハロウィンの限定物らしい。生意気に魔女っ子な仮装をしてやがる。似合ってるな。
「えーっ、ザップ知らないの? ハロウィンはハロウィンよ」
マイもアンと同じ事言ってる。ゾンビの格好してても可愛い。頭に包丁貫通のカチューシャをしている。恥ずかしがり屋なマイにしては本格的な格好だ。
けど、多分、マイもアンもハロウィンは楽しいものってくらいの認識で、詳細は知らないか忘れたんだろう。
僕はハロウィンは嫌い。いや、大っ嫌いだ。昔、勇者パーティーにいた時の僕には、ハロウィンとは、スライムになる日だった。スライムになると言っても溶けて液体になる訳じゃなく、スライムの仮装、色がついた大きな布に包まってずっとうずくまって匍匐前進するというものだった。仮装というより拷問だ。布から手足が出ると仲間から蹴られる。許可なく話すと蹴られる。通りががりの元気なお子様に蹴られる。あと犬にも噛まれる。闇の中蹴られるのは心にくる。見えないから身構える事ができないからだ。不意に蹴られるから変なとこに入る。筋肉に力が入ってないとこをやられるとやたら痛い。足音が近づく度に体を硬直される癖がついたものだ。最近、スライムの話が人気だけど、変身した人間型にコスプレしてる人はいるけど、スライムになってる人は見た事がない。まあ、やってみればわかるけど、めっちゃきつい。特殊な訓練を受けてないと、数時間は無理だ。昔、僕はハロウィンが近づく度に体作りのために匍匐前進の練習をしたものだ。今考えるとバカなのか? ハロウィンのために匍匐前進の訓練するなんて聞いた事ない。それに、外が見えるように工夫したら痴漢一直線だ。ミニスカ女子が増殖するからな。スライムの仮装、それは闇の中這いずり回るだけの孤独な作業だ。全くハロウィンを楽しめない。トラウマになるだけだ。けど、誰かやらないかなー。多分僕は暖かい目で見守ってお菓子なんぞあげる事だろう。
辺りを見渡すと、仮装なのか? ヤベー奴もポツポツいやがる。僕のスライムに勝る奴はいないが。なんて言うか、ミニスカ系の魔女とか吸血鬼やゾンビは許せる。ちょっと寒いのに頑張ってると思う。むしろ、仮装頑張れと思う。
ちょっとなんだかなーと思うのは、なぜかフライング気味なサンタ。ハロウィンってお化けに仮装するんだよな。サンタってお化けなのか? もしかしたら、クリスマスにも兼用して衣装代を節約してるのかもしれない。
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