ゴールデンウィンド 3
「嘘だろ……腕がくっつきやがった……」
ダニーは自分の目を疑う。まじか! 確かにトロールの再生能力は凄いとは聞いていた。だが、相打ち覚悟で切り落とした腕を拾ってくっつけたのを見て動きが止まる。
アレフ一行は、アレフとダニーの前衛二人に、前衛もできるヒーラーのマリアと後衛で攻撃魔法とバフ、デバフを撒くポポロが加わった事でパーティーの戦力が格段に上がり、破竹の快進撃を続けていた。
そして、無謀にも騎士団が出張らない限り討伐が難しいとされる、はぐれのトロールに挑んでいる。
標的を見つけダニーが盾となり、ポポロのバフとデバフで有利な状況を作り、マリアが癒しながら、アレフが遊撃する。だが状況は刻一刻と悪くなってきた。トロールに与えた傷はすぐに搔き消え、そのスタミナは衰える事を知らない。ずっと全力で攻撃してくる。だが、冒険者たちは少しづつ疲弊する。スタミナ、魔法の回数にも限りがある。
このままだと不味いと思ったダニーは賭けに出た。皮を斬らせて骨を断つ。邪魔な盾を捨て、肩口でトロールの棍棒の殴打を受け止め、剣をトロールの腕の上に回し左手で剣先を掴み、体重をかけて断ち切った。そして転がり退り立ち上がったダニーが見たのは絶望的な光景だった。
「ダニー、伏せろ!」
アレフの声にダニーは弾かれたかのように屈む。
「くたばれ! デカブツ! ディバイン・サンダー!」
アレフの両手から放たれた雷がトロールに直撃する。適正が無いと使う事が難しい、雷の魔法だ。
なんとアレフはポポロとマリアと接するうちに、攻撃魔法と回復魔法を自分のものとした。
資質がある者が学園で数年の学びでやっと身につける事ができる攻撃魔法。
神に愛された者が真摯に欠かす事なく祈り続け、一握りの者が手にする事が出来る神秘の回復魔法。学園の主席と神殿が秘してた聖女、最高の教師につけた事がアレフの天性を開花させた。
「ぐぅががごがががーーっ」
黒焦げになり体をよじるトロール。だがその足がダニーに向かう。煙を上げ、焦げた皮膚を落としながら駆け出す。
「ダニー! 止めだっ!」
叫ぶアレフ。
「大地よ、我が意に従え! ピット!」
ポポロが杖を地面に刺し、なけなしのマナで地面に小さな窪みをつくる。トロールが踏み出した足元に。
ガッ!
穴に入った右足を逆方向に曲げながらトロールの体が前傾する。そこにダニーが下から掬い上げるように剣を振るう。トロールの首筋に。トロールの首だけ残り、体は大地を転がっていく。
「うぉっしゃっしゃーーーーーーっ!」
ダニーが両手を上げ、言葉になってない叫びを上げる。
「しゃぁーーっ! よくやったなー」
ダニーとアレフはハイタッチする。
「ちょっとー。今日のMVPは、私でしょ」
ポポロがあざとく口を尖らせる。
「ああ、良い感じの穴だったぜ」
アレフの言葉にポポロは顔を赤らめる。ビッチムーブをしてるけどフリで、中身は元優等生の耳年増だったりする。
「ダニー。頭を下げろ。癒す」
マリアがダニーの頭に触れて回復魔法を流し込む。少し効率は下がるが、毛むくじゃらなダニーに触れるのは頭しか嫌みたいだ。
そして、彼らは討伐証明のトロールの頭を回収し、帰途についた。
私が住んでるのは地方なので、まだ、書籍が店頭に並んでるのは見た事ないのですよ。昨日は休業してほぼ寝てましたし。今日こそは書店に並んでるのを見たいものです(^_^)




