ゴールデンウィンド 2
「なぁ、『アレッフィーズ』ってなんかダサくねーか?」
ダニーは前を歩くアレフに絡む。何度繰り返したかわからない。ダニーはアレフが主張している『アレッフィーズ』はクソダサくて、弱そうな名前だと思ってるけど、柄になくオブラートに包んでる。
今、彼らは冒険者ギルドで依頼を受け、目的地に向かって街道を歩いてる。しばらく二人で冒険してたのだが、休養中にメンバーが二人増え四人になり、パーティー名を決めてるとこだ。
「俺様の名前になんか文句あるのか? 『ダニーズ』より全然マシだろ。『ダニーズ』ってなんか食いもん屋みてーだしな」
振り返ったアレフに露出度が激しい魔法使いの女がしがみつく。これ見よがしに大きな胸を押し付けている。ポポロッカ。新たに仲間になった魔法使いだ。こう見えても魔道都市の学院を好成績で卒業した才女で、色恋沙汰をこじらせて旅をしてたとこで、アレフを見つけて無理矢理仲間に加わった。
「『ポポローズ』にしましょ。なんか可愛らしいでしょ」
ポポロは鼻にかかった甘ったるい声で触れそうなくらいに顔を近づけアレフに囁く。
「悪くねーな。けど、お前と一緒で可愛い過ぎるな」
「アレフ、騙されちゃダメ」
もう片方のアレフの腕に小柄な少女がしがみつく。マリア。聖教国から逃げ出した聖女で、これまたアレフを気に入って無理矢理仲間になった。ちなみに逃亡記なので本名は誰も知らない。アレフの偽名仲間だ。
「ポポロは化粧で誤魔化してる。可愛いは私。『マリアーズ』がいい」
マリアは高い声でぶっきらぼうに言う。彼女は神殿育ちで対人経験が少なくコミュ障気味で、アレフ以外とはほとんど話さない。
「そうだな。それも可愛らしくて悪くねーな」
ここでアレフは考える。名前が入るとなんかダサいな。弱そうだ。
「あ、あれ、おめーと初めて戦った村じゃねーか?」
ダニーの指した方をアレフは見る。街道から分かれた先には小さな村。そうだ、あれは前にゴブリンを倒しまくった村だ。村は復興して柵に囲まれた家屋からは煮炊きの煙が立ち上り、道を挟んだ畑には金色の麦の穂が風に揺れている。
俺たちが守った村。俺たちが居なかったら滅んでた村……
アレフはしばし金色の海のように輝く畑に魅入る。
「金色の風……ゴールデンウィンド。俺たちは今からゴールデンウィンドだ」
「いいんじゃねーか?」
「アレフ、さいこー!」
「私も好き、金は」
仲間たちがアレフの感性を讃える。風がアレフの髪を靡かせる。そして、『金色の風』の伝説が始まった。
お話を書くのは好きですが、当然読むのも好きです。ブックマークを見ていただけると私が最近読んでるものがいっぱいできてきます。
その中で、大好きで更新がある度に読んでるものの一つが
『迷宮のナダ』
という、『乙黒』先生のお話です。迷宮、青龍偃月刀、チートなし。私の好物目白押しです。今度10/30日に書籍が発売されますので、楽しみにしてます。当然私は購入します。一緒に応援しましょう!




