姫と筋肉 筋肉の秋 2
レリーフがお金を払う。そう言ってはいるけど奴は今は動けないほど疲労している。これはチャンスなんじゃ? もし、今からコイツを癒したとすれば、この後付き纏われてロクな目に会わないんじゃ? 逆にこのまま放置したら、ゆっくりのびのびとゴブリン退治でもできるんじゃないだろうか?
「たのむ……飲ませてくれ……いや、それが嫌なら、ぶっかけてもらってもいい」
レリーフがピクピク震えながら、弱々しい声で頼んでくる。こいつどれだけ体を酷使したんだよ。しょうがねーなー。
「で、お前のポーションはどこにあるんだ?」
「パ、パンツの中だ……」
「取れるかボケェ! そこで一生へばってろ。そんなとこにポーション入れるなや!」
「このミドルポーション。最後の一つなんだ……お前、ばーちゃんから習わなかったのか? 大事なものはパンツに隠せって……」
ばーちゃん……僕の祖母はそんな事は死んでも言わないが、聞いた事がある。治安が悪い国とかに旅に行く時には靴の裏やパンツの中に大事なものを隠すって。
「お前、それは治安が悪い国の話だろ。ここは王国だぞ。治安と言うか、空気を悪くしてるのはお前だけだよ。ていうか、お前にはたくさんのしもべがいるだろ。そいつらに頼め」
こいつはレア職の死霊魔術師。なんかアンデッドの部下を色々従えている。
「おいおい、何言ってる。人前じゃあんまり出すなって言ったのはお前だろ。お前が居ないならもうすでに出してる」
「僕が居なくても出すな!」
ん、気が付くと、なんか遠巻きに人が集まってる。もしかして、なんかのアトラクションと勘違いされてる。
ヒソヒソ「ぶっかけるんだって」
ヒソヒソ「大事なものはパンツに隠せって」
ヒソヒソ「人前じゃ出すなですって」
ヒソヒソ「若くて可愛いのにやーねー」
なんか、僕の地獄耳が、いやーな言葉をとらえる。なんか勘違いされてねーか? なんだこれは公開処刑なのか? もしかして僕も変態の仲間だと思われてる? ヤバい。顔が熱い。僕は目立つのは嫌いじゃないが、晒し者は無料。
「お金はいらないっ! ついてくんなよ!」
僕は収納からエリクサーを出してレリーフにぶっかけると逃げ出した。
「どうした? 機嫌直せよ。お前、目玉焼き好きだろ」
僕はレリーフがどうしてもって言うから、カフェでゴチになってる。寡黙なレリーフが僕のご機嫌を取ろうとしてる。こういう不器用っぽいのは嫌いじゃない。
「お前なんか嫌いだ。けど、それは食う」
僕は目玉焼きをつつく。ポリシー的にまずは白身からだ。黄身は最後に一口派だ。
「さっきのエリクサー代には足りんだろ。払うぞ」
レリーフがお金を払う。あ……
「いいって言ってるだろ。ここでは出すな!」
いかん、このカフェ、好きなのに、出禁になっちまう!
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