三代目の旅立ち
「じゃあなー」
僕はザップたちに手を振る。みるみるうちに豆粒みたいになり見えなくなる。せわしない奴だな。けど、まじで強かった。力は互角、僕の方が素早くて、見た目を利用して、周りみんなに応援してもらっても負けた。やっぱり手足が短いのは致命的だった。見た目でザップが怯むかもって期待してたけど、関係なかった。けど、男バージョンのコナンで戦ってたとしても結果は変わらなかったと思う。経験、くぐってきた修羅場の数が違うんだろう。
「カナン、街の人たちを解放しないと」
ミーが僕の肩を叩く。そうだ。ディーに頼まないと。迷宮の設定を変えられない。今、迷宮の地下一層に閉じ込めてるドバンの住民たちは、元ディーの部下のホネガラに管理者権限で、迷宮のルールを変えてもらわないと、最下層まで行かないと外には出られない。僕の収納スキルを使ってはいるのだけど、迷宮が入ってるのは僕の収納世界とは違う世界らしくて僕にはコントロールできない。
ディーに頼んでドバンの住民を瓦礫の広場に戻してもらう。なんていうか、民度が低くて懐かしい。僕らが過ごした帝国の下町の住民みたいだ。とにかくやかましい。その中の偉そうな人と、ジブルさんとパムが今後のこの街について話している。パンパンと手をうちながら、ミーとアムドさんが災害は終わった事を伝えて住民たちを追っ払う。家とか仕事に戻ったんだろう。元ギルドマスターだけあって、アムドさんはカリスマあるなー。ミーはただ図太いだけだ。
ジブルが近づいて来て、僕に何かを差し出す。手のひらサイズの板? タブレットに似てる。
「何かあったら連絡して、これ、私の予備のスマホ。まあ、使い方はいじればわかるわ。じゃ行くわね。ここの事を話し合わないとなのよ」
「なんで、オイラもなんだよ」
パムの手をジブルが引っ張っていく。
そして、僕と仲間しか居なくなった。
「じゃ、僕らは迷宮に行くけど、みんなは好きにしなよ」
僕がこれからする事は決まっている。収納に迷宮を入れたらなんか謎なとこにつながったみたいで、迷宮から外にでると見た事がない植物が生えてる森なった。迷宮を拠点にそこを冒険する予定だ。
「おではこの街を見て回りたいぞ」
「はいはい、それは後でね」
ミーがディーの手と、先生のハサミを掴んで、収納世界に消える。
「私は、まあ、行くとこないからな」
アムドさんはついてくるって思ってた。
「私も行くわ。冒険者やるって決めたから、未知のとこなんて心が騒ぐわ」
マリンも。
「「私たちも行く」」
レイとライも。
そして僕は収納世界へと向かう。まずは迷宮の居住区で戦勝パーティーして、そのあと数は新しい冒険だ!
あと、13日で書籍発売です。受賞から2年1ヶ月、長かったですが、そのお蔭様でいいものになったと思います。加筆はあんまりしてないのですが、修正はたくさんしました。あと、プチっと設定が変わってるとことかもありますので、ウェブ版と見比べていただけたら幸いです。
読んでいただきありがとうございます。