冒険者の登竜門
「え、無理無理、できないよ!」
僕はぶんぶん首を横に振る。けど、ルルさんとデルさんの目はしっかり僕を見据えている。
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迷宮の地下9層までは、スライムと巨大な虫などがポップする魔物だった。スライム数匹と、とっても気持ち悪い巨大な蜘蛛と僕が1対1で戦ったあと、そこら辺はもう大丈夫だと言うことで、駆け足で地下9層まで降りた。地下9層にはフロアボスのキングスライムがいたけど、ハンマー数発で倒す事が出来た。そして、今は地下10層。始めての人間型のモンスター、ゴブリンが登場した。
僕は不快感で顔を顰める。子供位の体躯に緑色、湿った日影に生えてる苔のような黒っぽい色の肌。錆びた武器を持ち意思があり、独特の言葉も話す。けど、一番不快なのはその臭いだ。酸っぱい体臭に糞尿のような臭い、さらに動物の死骸のような臭いが混じって正直気持ち悪くなる。
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ルルさんが気絶させたゴブリンにとどめを刺すようにデルさんが言う。
無理だ!
人間と似たような生き物を殺すなんて僕には出来ない。
ん、なんか、このシチュエーション見覚えがあるような……
「無理ならここでお別れね。ラパンちゃんが強くならないと、いつかどっかで野垂れ死ぬことになるわ」
2人は僕に背中を向け歩き始める。
「………………」
「………」
そうだ……
生き残るため、仲間を守るため、マイさんとアンさんを助けるためにも強くならないと。
「アアアアアアーッ!」
僕はハンマーでゴブリンを殴る。嫌な感触が手に残る。いつの間にか涙が溢れている。
「よくやったわ、ラパンちゃん!」
ルルさんが抱きついてくる。でかい胸が柔らかい。
「頑張ったわね。私も最初は辛かったわ。ラパンちゃん泣いてもいいのよ」
デルさんも抱きついてくる。しかも、頭をなでなでされる。デルさんは痩せてるように見えるけど、胸も含めて柔らかい。僕みたいに骨張ってごつごつしてない。大人の女性なんだな。
ゴブリンのとどめを刺すのをそれから、十数回させられる。
「ああ、やっぱりザップ兄様を見てるみたいだわ」
ルルさんはハグにほっぺたすりすりが加わり始めた。
「可愛いわ、やっぱり可愛いわ今日は絶対にギューして寝るわ」
もうデルさんは意味もなく抱きついてくる。
はっきり言って、ゴブリンを相手にしてる時間よりも、無駄なスキンシップタイムの方が長い気がする……
けど、命を奪っているという罪悪感と根源的な不快感を和らげてくれているのは事実だ。決して慣れていいものではないと思うが、少しづつ手と体の震えは和らいで来た。
やっぱり個人的にはルルさんとのハグは極上だ。覚えてはいないけど、お母さんってこんな感じなのかもと思う。
「次は、実戦よ。ラパンちゃん頑張ってね!」
デルさんが僕の背中を押す。
目の前には、驚いた顔の一匹のゴブリンがいる。
お肉を食べてる時にたまにラパンちゃんのような事を考える事もあります。出来る事は感謝する事だと念います。
みやびからのお願いです。
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