ミッションコンプリート
ブォン!
風を切る音、カナンの棍棒。視界にいないって事は後ろ。僕は前に飛び込みくるりと回り後ろを向く。受け身系は大事だ。倒れて立ち上がるには、知識と反復練習がないと難しい。特に武器を持ったまま地面を転がるのは練習してないと武器を取り落とす。目の前に迫るカナンの足、悪手だ。下がりかわしながら、棍棒で狙うはカナンのアキレス腱。下から掬うように打ちつける。カナンはその力を利用して、片足で後ろに大きく跳び上がる。はい、これもダメ。跳んだら着地する。狼とかがよく首筋を狙って跳んだりするが、あれって落ち着いて一歩さがったら着地ギリギリカウンターでお腹とか蹴っ飛ばせるんだよね。くるりと回って着地しようとするカナンを、当然狙う。急加速からの横薙ぎ。
「ちょっと待った、僕の負けだ」
カナンが空中で止まる。あ、そうだった一撃入れれば良かったんだった。カナンの左手には小さな金色の魔方陣、収納のポータルだ。ポータルも使えるのか。いいな。
「じゃ、二回戦は空中戦だな。落ちるか、一撃貰った方が負けだ」
「いや、もういいって」
カナンは着地すると逃げる。足、エリクサーで治したのか。確実に折ったのに。痛み残ってるのに走れるって、カナン、何度も死線をくぐり抜けたんだな。カナンはマイの後ろに隠れる。よくわかったな、一番強いのが誰か。せっかく全力で戦える相手をみつけたのに消化不良気味だな。
「はいはい、で、ザップ、どうなの?」
マイが問いかけてくる。マイが聞いてるのはカナンの本質についてだろう。邪悪なら、倒すか追放する。そういう話はしてた。
「いいんじゃないか?」
まあ、戦った限り悪い奴じゃないと思う。邪悪な奴は戦い方も邪悪だ。隠してもそれは全力な時には臭うものだ。
「じゃ、帰るとするか。ジブル、ここの事は任せたぞ」
「ちょっとー、ザップ、軽く言わないでよ。あんたも手伝いなさいよね」
「嫌だね」
言霊使いは倒した。三代目は放流で大丈夫だろう。もう、僕にはやる事はない。言霊使いの言葉じゃないが、平和には刀はいらない。まあ、また、鍋のように周りの人の生活に役立つくらしに戻りたいものだ。
「帰るぞー、マイ、美味い飯でも作ってくれ」
「はーい」
マイが魔法の絨毯に乗って隣にくる。この絨毯ってレンタルだったよな。かなり長い間借りてたけど、金額、ばかみたいになってんじゃねーか?
「ご主人様ーっ。肉、肉食べられます?」
「当然だ。デカい肉、食うぞ」
ドラゴン娘は嬉しそうに絨毯に乗る。
「私もデカい肉食べますぅ」
ドラゴン二号も絨毯に乗る。こいつ、ついてくるのか? 食費が……
ま、いっか。僕も絨毯に飛び乗る。
「私は、しばらく残る。ここでする事がある」
忍者なピオンは、ここが出身地だからな。けど、また後で来ればいいだろ。今回は一緒に旅したんだから、一緒に飯を食う義務がある。
「そんなの知らんな。アン確保しろ」
「らじゃー」
「うわっ、何をするっ」
ピオンはアンに掴まり抱き締められる。彼女の力では抜け出せないだろう。
「じゃ、またなー。何かあったらうちに来い」
僕はカナンたちに手を振る。
「もっと強くなって、今日のかりを返しに行く!」
カナンも、その仲間も手を振ってる。
「ちょっとー待ちなさいよー」
ジブルが何か言ってるが知らん。あとはあいつがなんとかするだろう。
絨毯はみるみる高度を上げ街を後にする。
疲れたー。しばらくゆっくりしたいとこだけど、今回、稼いでないような。数日ゆっくりしたら、頑張って稼ぐ事にしよう。
絨毯は飛んでいく。深い森の上を。緑色の絨毯みたいだ。この綺麗な森の中にある犯罪都市。もっといい街になったらまた来るのもいいかも。
第四部 犯罪都市の悪夢 完
あと数話、補完の話をして、しばらくミドルやショートの話でも書きたいなと思います。よろしくお願いします。
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