三代目と初代 2
「ていやーっ!」
掛け声を上げながらカナンが棍棒を振り下ろしてくる。掛け声まで僕に似てる。振り下ろしは、相手の利き腕の外に逃げる。人間の手って、外から内には力が入るけど、逆の内にはから外に開くのは力が入らない。だから、こうかわすと連撃を受けにくい。
僕の薙ぎ払いをカナンが受け止める。力は互角だ。なんか頭一つ僕より小さい少女に受け止められるのは悲しいものがある。力が互角ならスピード。下がり離れてテンポ良く連撃を放つ。全てかわし受け止められ、あまつさえ反撃される。スピードは互角、いや、カナンの方が少し上かも。力と速度を駆使し、攻撃し、攻撃される。辺りから音が消えてる。みんな僕らの戦いを息をのんで見ているのだろう。けど、勝つのは僕だ。少しずつカナンが押し込まれていく。後ろに少しずつ下がる。パワーは互角、スピードはあっちが上、技術もたいして変わらない。なぜか? なぜ、僕が優勢なのか? そりゃ簡単だ。リーチだ。長さにして手のひら一つ分くらい僕の方が手が長い。それだけで当然かなり有利だ。カナンはスピードと運動量でカバーしてるが、幾ら僕らでもスタミナは無限ではない。心をすり減らすようなギリギリの戦いはかなりスタミナを消耗する。カナンの動きが少しずつ荒くなってくる。もうじきだな。崩れたら、一本いただく。
「カナーーン」
盗賊風の少女、ミーが叫ぶ。
「カナン! 気合い入れろ!」
次は多分ダークエルフの美人さん。
「「カナーン、頑張れ!」」
このユニゾンは双子だろう。結構仲間と仲良くやってるみたいだな。良かった。僕の仲間たちの応援が聞こえないなー?
「ザップ! くたばれ!」
ピオンか。相変わらず素直じゃないなー。
「ご主人さまーっ。お腹すいたでーす」
アン、今言う事じゃないだろ。あいつ、ご主人って呼ぶ割にはリスペクト、ナッシングだよな。
「カナンちゃーん。頑張ってーっ!」
え、マイまでカナンを応援するの? という事は僕の味方は皆無?
「ザップさーん。頑張ってくださーい」
んー、パムだけ。
「早く倒して、さっきみたいに裸に、はうっ」
どうやらパムは誰かに制裁されたみたいだ。
飛んでくる応援はカナンばっかり。僕ってそんなに人望ないのか? まあ、けど、よく考えてみると、カナンと誰かが組み手してたら、僕もカナンを応援するなー。可愛いというのはそれだけで正義だ。もしかして、カナンの狙いはそれ? ギャラリーを味方にすると僕の勇者力は上がる。逆だとへる。やはり、カナンのパワーとスピードが上がる。声援を力に変えてる。だが甘い。リーチの差、経験の差が勝敗を分けた。上がった身体能力に振り回されている。カナンが振るった棍棒を流してがら空きになったカナンの頭に、頭はやり過ぎだな、ずらして肩に振り下ろす!
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