古の世界から
「かかったな。これが狙いだよ」
狙ってはないけど、丁度いい感じになったから言ってみた。ハンマーを収納にしまい、ガシッと両腕でカナンの腕を掴む。やらけーなー。そんな場合じゃない。急がないと死んじまう。なんか頭がボーッとし始めてるし。多分血が全身に回ってない。限界まで息を止めてるみたいだ。よしっ、ぶっぱなつ。なんかやな感じがするが、あとは野となれ山となれ!
「世界よ変革せよ! 『原始の世界』!!」
僕の体を白い光が包み込む。それはカナンの腕から彼女の体に纏わり付いていく。この白い光は神々しいけど地獄な光だ。触れた生き物以外を塩に変えてしまう。けど、僕の少ないマナだと、自分と自分が触れてるものを覆うくらいしかできない。
「なんだとぉ。それは駄目だ。な、なぜ、その神々に呪われた禁呪を、お前なんかが……」
良くしゃべる奴だな。ていうか、カナンに乗り移ってる場合じゃないだろ。
「廃エルフに教えてもらったんだよ。いいのか? お前も塩になるぞ」
僕はカナンを突き飛ばす。そして体に空いた穴を即座にエリクサーで塞ぐ。カナンはたたらを踏みながら後ずさる。
「人間を人間たらしめたのは道具、それを全て否定するとは暗愚の極み。古代森人か、裸族の馬鹿共がっ! あやつらをまずは滅ぼすべきだった……」
なんか早口で、僕の唯一の魔法にケチつけてやがる。カナンが着ていたゴスロリ服がぽろぽろと白い粉になっていく。
「くそっ同化しすぎた。離れられん……うるせー! 早く出ていきやがれ! ブッブーーーーッ!」
なんと、カナンは 右手で片方の鼻の穴を押さえ手鼻を噛みやがった。鼻から赤いもやが吹き出される。全裸で鼻から毒霧を吐く美少女……
『邪神を鼻水扱い……』
どっからかジブルのツッコみが。糸が切れたマリオネットみたいにカナンが後ろに倒れこむ。僕は収納からハンマーを出し、魔王力を込め走り出し赤いもやに向かって振り下ろす。
ぐにゅっ!
思いっきり踏み込んだ足がやらかいものを潰してるけど、気にしない。
「滅べ! 悪霊!!」
霧のような、赤いもやを叩いたのに確かな感触。
「グゥワーーーーッ!」
人というより、動物のような叫び声。それも徐々に小さくなっていく。まるで溶けるかのように、霧が晴れるように赤が無くなっていく。
「ただ、人のためだけに…………」
意味深な事を言い残して、言霊使い、名前を覚えられなかった邪神は消えた。
コロン。
地面に何か落ちた。どんぐり? 丸っこいどんぐりが一個。見るからにただのどんぐりだ。半分に割れている。もしかして、これが本体だったのか? なんかわからないけど、奴が消えた今、答えてくれる者はいないだろう。
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