言霊発動
浮遊する火の球をカナンも先生もかわす。
ドゴゴン!
火の球が爆発する。先生に命中したのか? 違う、豚頭、自分自身にぶつけやがった。爆風が吹き荒れ、カナンと先生が豚頭から距離をとる。もしかしてあいつ、二人と距離をとるために、自爆しやがったな。時間稼ぎ。ということは! 燃え盛る火炎の中、豚頭の口が開く。
「ザップ・グッドフェローーーーッ! わわ『ヒュン』われれれ『ヒュン』れにににににしし『ヒュン』ししたたたたたが『ヒュン』がががえええ『ヒュン』えっ!」
やばい、ぶっつけだけどやるしかない。豚頭の言葉、意味を成したんじゃ? われにしたがえ。言葉の連打でもいいのか? いいんだろう。意味が通じているから。
「ザップ。ゴブリン頭をぶっ飛ばせ!」
僕の体が動き、淀みない動きで先生をハンマーで掬い上げる。僕を警戒してなかったのか見事に亀の甲羅の腹に命中。大きな弧を描いて、更地になったエリアの外まで吹っ飛んでいく。
「先生っ! ザップ、何してんだよ」
「すまんなやりたくてやってる訳じゃない」
「ザップ、次はその小娘をぶっ飛ばせ!」
僕は体が引っ張られるような動きでカナンに襲いかかる。流れるような動きで一撃、二撃、三撃目はカナンがハンマーを合わせてくる。
ガキン!
見事に受け止めやがった。力を入れても動かない。嘘だろ。僕の全力を押し返そうとしてる。神竜王ゴルドラン。あいつ並み、いや奴より力が強いんじゃ? けど戦いの年期が違う。少し力を緩めて押し込んできたカナンの腹を蹴る。少し罪悪感。何気に女の子を僕が蹴ったのって初めてじゃないか? いや、奴は変身してて元は男だからノーカンだ。
「ぐぅうっ」
カナンは呻きながら転がっていく。結構いい蹴りが入ったからしばらくは立ち上がれないだろう。もし魔法や薬で癒しても痛いものは痛いし、息が詰まれば動けなくなる。
火が消えた豚頭がカナンに近づき、その首を握り締め持ち上げる。
「ぐっ、ぐわーーっ! ちっ力が出ない」
『まずいわね。あいつカナンからエネルギーを吸い取ってるわ。エナジードレインってやつね。私も習得したいけど、適正がいるのよね』
ジブルしゃれこうべが解説してくれる。いつの間に転がって来たんだ?
「負けるかーーーっ!」
カナンが豚頭の腕を掴む。ここから見ても指が手に食い込んでる。さすが僕の分身。素晴らしい剛力だ。しばらくしたら拘束から逃れられるだろう。
「くっ、ビーフより怪力だというのか?」
ビーフって誰だ? ビーフ、牛肉、牛って事は、十二神将の牛人間の事か?
「ザップ・グッドフェロー! 全力でコイツを捻り潰せ!」
僕はハンマーを両手で構え、持ちうる全ての力を込める。僕に対する人々の畏怖、魔王力を集める。ハンマーを黒いもやが包み込む。
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