邪神の力
「くっ、やっかいなけ『ヒュン』だな」
言霊使いが何を言い出すかわかんないから、喋ったら剣で斬る。厄介な毛……多分『剣』って言いたかったんだろな。
喋りながらも豚頭は、カナンと先生の攻撃をしのぐ。攻撃が擦るが出血してないな。
「十二神将『ヒュン』わがち『ヒュヒュン』となれ」
げっ、なんか意味ありげな言葉になっちまった。『ち』が頭につく三文字『ちから』か? うぇ、焦げた鶏人間と、明らかに足が折れてるネズミとウサギと牛とイノシシ人間が立ち上がる。全員デロッと形が崩れ、赤いスライムみたいなものになって豚頭目がけて飛んでくる。カナンと先生はそれらをかわし、豚頭が大口をあけ、そこに赤い物体が飛び込んでいく。食ってるのか? それ以前に、十二神将に与えた命令って、死ねって言ってるのと大差なかったんじゃないか?
もしかして、条件を満たすと自殺しろって命令もきくのか? 五体のスライムみたいなのを飲み込む度に、豚頭が大きくなっていく。豚頭の身長は先生が多分二メートルくらいに見えるから、その倍、四メートルくらいあるんじゃないか?
『邪神、改めて化け物ね。下位の邪神を取り込んで更に強くなったみたいね』
豚頭の邪神も凄いとは思うが、この足元のしゃれこうべも邪神の一種なんじゃねーか? この状態で生きてる? ってどんだけだよ。
カナンたちに加勢しようと思うが、なんか近づいたらやられそうだ。先生に。先生が遮二無二攻撃してカナンがそれに合わせている。見てて先生の動きは全く読めない。たまにオマールハサミが飛んだりするし。しゃあないなー。僕はスルスルと地面を這うようにポータルを飛ばす。豚野郎を下から田楽刺しにしてやる予定だ。
『それにしてもマイたち遅いわねー。ちょっと凝った迷宮にし過ぎたわね。あのホネガラの馬鹿。管理者権限でさっさと通せばいいのに』
「ホネガラの馬鹿ってお前の事か?」
『違うわよ。ディーの迷宮の管理者で、ドラゴンスケルトンウォーリァーよ』
「ドラゴンスケルトンなんとかってなんだ?」
『竜の骨で作ったスケルトンの上位種のようなもんよ』
まあ、わかったようなわからないような。けど、今はこの状態が好ましい。敵がデカいけど一体だから、うちは前衛のクラスばっかだから仲間が増えても戦力は比例しない。特にドラゴン娘二人は今来ても邪魔だ。
「ザップ・グッドフェロー。かせい『ヒュン』よ」
おっと危ねー。剣一閃。言霊か。「かせいよ」ってなんかやな言葉になってるな。「かせいせよ」だったんだろな。あいつ、よく、カナンたちの猛攻をしのぎながら言葉を紡げるな。
けど、なんか言葉斬り、事故ったら効果が出そうだな。そろそろ安全策をとるか。
「ふんっ!」
豚頭が気合いを入れる。奴の回りに二個三個と炎の球が浮かぶ。あいつ魔法も使えるのか。
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