斬る斬る斬る
「こ『ヒュン』ドラ『ヒュン』ンをた『ヒュン』せ」
剣筋三閃! 僕は言霊使いの言葉を斬った。察するに『このドラゴンをたおせ』とでも言ったんだろうが、言葉が意味を成さないと発動しないみたいだな。
「な『ヒュン』! な『ヒュンヒュン』とー!」
豚頭がなんか言ったから斬った。「なんと!」か「なんだと!」と言ったと思われる。言霊じゃなかったみたいだ。
「ななとー? 納豆食いたいのかー?」
とりあえず煽ってみる。少し気を取られたのか、豚頭の体にディーの渾身の引っ搔きがヒットする。血を撒き散らしながらその巨体が後ろ向きに倒れる。
「くそがっ。大地よ、白いドラゴンの下に深い穴を穿て!」
くそっ、油断した。倒れながら言霊放ちやがった。目の前のディーの体が沈み消える。ディーは言霊に無敵だったけど、その周りに効果を及ぼせば効くってわけか。
ヨロヨロと立ち上がろうとする豚頭。弱ってるな。一気に畳み込む。僕は左手に剣、右手に愛用のハンマーを取り出し突進する。剣はもし奴が言霊を放ったときの保険だ。この一撃に全力をかける。なんか片手で持つハンマーは頼りない気がするから、豚頭の前で跳び上がりながら前に回転する。
「でいやーっ!」
突進力と回転力が加わったハンマーがさっきディーがつけた傷にヒットする。
ドギュッ!
重く、何かを踏み潰したような音を立て、ハンマーが突き抜ける。大きく肉をこさげ飛び散る。豚頭は倒れながら吹っ飛んでいく。
通った!
その言葉が似つかわしい。良い感じの打撃が入った時はいつもより感触が弱く感じる。まるで突き抜けたかのようにふり抜ける。そういう時は決まってやられた側はぐちゃぐちゃになってる。
僕は降り注ぐ血肉を収納に入れながら着地する。隣には下が見えない大穴。ディー、かたきは取った。
ドシャッ!
豚頭の元三頭竜は地面に叩きつけられる。そして数度跳ね、動かなくなる。ここから見ても、なんかぐちゃぐちゃでわけわからなくなってる。血が噴き出して、骨が飛び出してる肉塊。さすがにこれはこたえてるだろう。
「ザップ、倒したのか?」
カナンの声。見ると彼女と先生以外は地に伏している。あっちも終わったようだな。
「ディーは?」
「穴ん中だ」
「まあ、ディーだから大丈夫だね」
「カナン、おで、腹減ったぞ。アレ食っていいか?」
先生がオマールハサミで肉塊を指す。凄い思考回路だ。なにをもってアレを食料扱い出来るのか?
「待て待て、生は良くないだろ。食らえ! 自家製メテオストライク」
言霊使いは化け物だ。念には念を入れないとな。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーッ!
肉塊の上に燃え盛る巨岩が墜ちてくる。カナンたちと僕の前にポータルを出し、熱風を遮断する。




