吹雪の斧
「ねぇ、これ、試しに使ってみて」
リビングで寛いでいる僕に、見た目幼女の導師ジブルが装飾でゴテゴテした斧の柄を差し出してくる。
多分魔道具だ。たまにジブルは遺跡とかで新しく見つかった魔道具を僕に使わせて、その使用感をまとめて魔道都市のギルドに提出している。若干のお小遣いを貰えるし、危険なものは無いので喜んで引き受けている。
柄を掴むとヒンヤリしている。武骨でデカい斧を食事用のナイフでも差し出すように渡してくるジブルはかなり違和感ある。けど、僕の仲間は基本的にかなり『剛力』のスキルを鍛えているので、これが日常だ。
「で、これはなんなんだ?」
「『吹雪の斧』よ。攻撃した敵に吹雪が襲いかかるという凄まじい効果のある武器よ。結構古くからあるものらしいんだけど、全く有名じゃないのよ。強力な武器なのに」
まじか! 魔法の追加効果がある武器なのか。それは是非使ってみたい。場合によっては借金して買うのもありだ。魔法の追加効果がある武器はまず市場に出回らない。手に入れた者がだいたい使うからだ。例えばファイヤーボルト、炎の初期魔法を放てるダガーとかでさえ、べらぼうな金額がつく。まあ、それもそうだ。魔法が使えない者にとって、魔法の追加効果が有る武器なんでまさに夢の一品だ。たかだかファイヤーボルトでも、武器の追加効果で発生すらならかなり戦いの幅が広がる。
「じゃ、ジブル、マイに伝えといてくれ。晩飯には戻るって」
僕は速攻王都の冒険者ギルドに向かい、手頃な討伐依頼を受けて戦いに向かった。
「ギャイイイン!」
僕が放った一撃は空を切ったけど、その後に発生した吹雪がグレーターウルフに襲いかかる。すげぇ、これは大当たりだろ。僕の周りに雪が吹き荒れる。うん、ちょっと寒いな。
グレーターウルフは3匹、僕は次の奴に向かって斧を振る。
「ギャン!」
渦巻く吹雪に弾かれてウルフが弾き飛ばされる。おお、凄い。辺りに雪が舞う。うん、多いな雪。
もう一匹のウルフを探すが視界が雪雪雪で見えない。まじ辺りは吹雪だ。さすが吹雪の斧。って5メートルくらい先も見えない。僕が今居るのは森の中、方向も気をつけて無かったから分からない。こりゃダメだ。しょうが無いから周りの空間を丸ごと収納に入れる。そして視界は確保出来たけど、ウルフたちの姿はもう見えなかった。逃げられた。依頼失敗だ……
「で、どうだったの?」
リビングのソファに寝転んでる本を読んでるジブルに斧を返す。
「んー、威力は凄いが、屋内用だな。吹雪で視界が悪くなり過ぎる。あと、防寒対策も必要だな」
「ありがとう。やっぱり戦闘用には厳しいって事ね」
その後、『吹雪の斧』は常夏の国に引き取られたそうだ。んー、今度の夏のために買っとくべきだったか? いや、冷房器具としては値段が破格過ぎたし、ま、いっか。
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