骨身に染みる 終わり
「やっぱ喋れないのは不便だったな」
ようやく人間に戻った僕はまずは喋ってみた。
「喋らないザップも悪くは無かったわ」
ジブルはそう言うが、意思疎通が難しかった。複雑な内容は地面に書くくらいしかないし。
「まあ、何事も経験だな。今日はスケルトンで生活して色々学べたからな」
生意気な事言いながらポルトはエールを煽っている。学ぶも何も、ゴブリンには軽くやられて、薬草採取ではその不器用さを披露してたよな。まあ、コイツは一日失踪した事で帰ったら大事だろうから、今しばらくはゆっくりさせてやろう。
ここは王都の個室があるレストラン。ジブルが人間に戻ってとってくれた。これから晩飯だ。
あの後、ポルトが復活して、僕らは討伐を諦めて、薬草採取をする事にした。ジブルはサボってたが、ポルトは楽しんでいた。慣れたらスケルトンでも薬草採取は難しく無かった。疲れないし、お腹も減らないし、暑くも寒くも無いし、多分スケルトンに向いてる仕事はこういう単純作業だ。ダンジョンで戦えるスケルトンは戦い用の奴なんだろう。まさかスケルトンで戦うのがあんなに難易度が高いとは思わなかった。そして、ギルドで換金して、ここで変身が解けるのを待っていた。先に戻ったのはポルトだ。全裸にならないように先に服は着た。
「まじかよ。一日働いてたったこんだけかよ」
ポルトが銀貨を手にして嘆いている。僕らが納品した薬草は全部で銀貨3枚。倒したゴブリンは銀貨2枚。木賃宿で一泊銀貨2枚だから、僕ら2人で
稼いだと考えたら、宿代抜いて、飯2食分も残らない。
「まあ、駆け出しの冒険者にしては稼いだ方にはいるぞ」
僕はもっと稼げて無かったからな。
「まじか、でもこれこそ、文字通り、骨折り損の草臥れ儲けだな」
「おいおい、お前、それ、言いたかっただけだろ」
「それに、スケルトンって大変だって骨身に浸みたぜ」
酔っぱらってるのかポルトは饒舌だ。けど、微妙に面白く無い。なんか育ちが良い奴のギャグってなんで滑りまくるんだろう? 多分、セレブってだけで、世間の感覚とは少しズレるんだろう。しょうが無いな。
「スケルトンにはもう成りたくないな。それがホンネだホネなだけに」
さらりと上手い事言ってやる。
「おい、ザップなんだそのドヤ顔。俺より面白く無かったぞ」
いや、ポルトよりは良かったとおもうが? 僕とポルトはジブルを見る。
「おあいホネ」
おあいこねって言うのをもじったんだと思うけど、なんかそのドヤ顔にそこはかとなく哀愁を感じる。アラサーになると羞恥心が麻痺るんだろうか?
最終的にはスケルトン薬は幾つかはポルトが買ったそうだ。ジブルはほぼ材料費とか言ってたけど、薬の値段は法外だった。まあ、限定的ではあるが、不死身になるような薬だから値が張るのはしょうが無いだろう。それから王都にはナンパしまくるスケルトンの噂が流れた。何無駄遣いしてんだよ王様……
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