骨身に染みる 8
「グルルルルルルルッ」
目の前でゴブリンがよだれを垂らしながら唸り声を上げている。犬みたいな鳴き声だな。良い骨でも見つけて噛み付きたいのか? あ、そうだ、僕は今スケルトンだ。もしかして、このゴブリン、僕の骨をかじりたいとか思ってるのか? 多分固くて歯の方が折れるぞ。
けど、これじゃ千日手だ。だけど、そうなったら最終的には僕が勝つ。こんなヨワヨワなスケルトンだけど、全く疲れてない。これはメリットだ。疲れないは反則だ。ずっと戦ってたらゴブリンは生き物。疲労して動けなくなるだろう。
けど、それは面白くない。多分、スケルトンよりゴブリンの方が身体能力的には全てにおいて勝っている。けど、僕は今まで沢山の戦いを経験してきた。その経験を駆使すればこの戦力差も覆せるはず。そうじゃなきゃ、今までの僕の戦い方は力押しで技術皆無って言ってるようなもんだ。みんなは僕を脳筋脳筋って言いまくるが、こう見えて僕は頭脳派だと思っている。
けど、どうするか? こちらからの攻撃はことごとくかわされる。ノロノロ過ぎる。
やっぱりカウンターしか無いか。相手の攻撃を誘って、こっちが攻撃を食らった瞬間に致命打を与える。名付けて『骨を切らせて肉を断つ』戦法。ってそのままか。僕のどこを攻撃しても骨だ。スケルトンだもんな。
攻撃を誘うと言ってもどうしようか? 隙を見せる? とは言っても今のスケルトンな僕自身が隙だらけのようなもんだもんな。隙、隙ねぇー。武器でも落として収納から出した武器で攻撃するか? いや、今回の戦いは収納無し縛りだった。攻撃するために剣を振り上げたまま隙を見せる。んー、思いつかねー。そうだ。背中向けて逃げる素振りでもしてみるか。僕はカタカタとゴブリンに背中を向ける。
「グギャッ?」
ん、今のゴブリン語疑問形っぽいな。ゴブリンの近づく足音。
ガツン。
背骨に確かな感触。ゴブリンの攻撃だな。僕は振り返りざま剣を振り下ろす。ゴブリンは僕の背骨に弾かれて仰け反っている。貰った! ジエンドだっ!
『ザップー』
ジブルの間が抜けた声がする。なんだよ。良いとこなのに。
ガッ!
僕の腕が弾かれて剣筋がズレる。何っ、ゴブリンがもう1匹? もしかしてジブルは僕にこの事を。ならもっと説明しろよ。奴は作りが良いショートソードを手にしている。なんか見覚えがある剣だな。それにしても何故? 僕は体勢を整えながら下がる。そうだよく見ると、仲間を助けたゴブリンはさっきまでポルトが相手してた奴だ。
『すまんなー。ザップ』
全くすまなさそうなポルトの声。声の方を見ると、地に伏したスケルトン。あ、足砕かれてる。まじかよ。ポルト、ザコすぎるだろ。しかも武器まで奪われたのか? お前は弱ったゴブリン以下かよ。とは言っても僕も弱ったゴブリンと互角だけど。
ポルトからショートソードを奪ったゴブリンと僕と戦ってた奴がこっちを向いて構えている。これもう詰んだんじゃ?
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