人魚の鑑定能力
「はい、持ってきたよ」
僕はテーブルに僕が身につけてた謎の布を置く。僕と少女冒険者4人とリナちゃんと人魚はテーブルを囲んで座っている。
「ちょっと待って、もしかして、それ鑑定する気?うちが鑑定したるから、スクロール頂戴」
人魚は水の入ったタライに入ってる。そう言えば、彼女は鑑定のプロって言ってたな。
「え、鑑定できるの?けど、あたしたちは初対面だから、なんか証拠見せてくれないと、さすがに高価なスクロールあげられないな」
アンジュさんは腕を組んで人魚を見る。
「ま、そうよね、赤毛さん、あんたの斧は片方はミノタウロスの斧+1、取得経験値+10%と自己修復がついてるわね。もう片方は+2で、自動回復と自己修復がついてるわ」
アンジュさんは息をのみ、二本の斧を大事そうに抱きしめる。
「魔法使いさんのは+2で防御力上昇と危機感知と自己修復がついてるわね」
ルルさんも斧を抱きしめる。なんでだ?
「エルフさんのも+2で剛力と加速と自己修復がついてるわ」
デルさんも斧を抱きしめる。なんかの儀式なのか?
「神官さんのも+2で防御力上昇と自動回復と自己修復がついてるわ。こんなものでどう?」
神官戦士さんもいとおしそうに斧を抱く。
「この斧はマイ姉様が選んでザップ兄様から貰ったものだが、ま、まさか我々の弱点を補強してたなんて」
アンジュさんが涙ぐむ。
「マイ姉様……私達を守ってくれてたのね」
デルさんも涙ぐんでる。
「ザップ兄様……」
ルルさんが泣きながら僕に抱きついてくる。
「会いたいよぉ」
神官戦士さんは声を上げて泣き始めた。
少女冒険者4人とも泣き始めた。どうしよう。これは石化した2人を見せたらとんでもない事になりそうだ。
「と言うわけで、布の事なんだけど、これはミノタウロスの腰巻きってものよー。あ、スクロール貰うわね」
人魚はスクロールを取るとブラジャーの中に入れた。
「ズズッ、ということは、ミネアの言った事は本当かもしれないな」
鼻をすすってアンジュさんが僕を見る。
「けど、ミネアよ、どこからどこが本当か解らないわ、マイ姉様とアン様がやられるなんて信じられないわ」
デルさんが涙を拭いながら言う。
「信じられないかもしれないけど、本当よ。ラパン、2人を収納から出して」
なんかやつれたミネアが窓から飛んでくる。
「いいの?多分みんなあれ見たら耐えられないよ」
「そうね、けど、助けるのを手伝ってもらうためには、見てもらうしかないわ、みんなの為よ」
「解った」
僕はミネアに答えて、収納からタブレットを出す。
「ザップ兄様のタブレット……」
アンジュさんが息をのむ。
僕は一瞬躊躇うが、収納から石化した2人をそばの床に出す。
斧を構えて今にも飛びかかりそうなマイさんの像。
拳を握り構えている、アンさんの像。
今にも動きそうなそれらを見て、僕と妖精以外の全員が固まった。
静寂が辺りをつつみこんだ。