クリスマスSS 願い
「綺麗だな。とっても」
僕は何気なく呟く。イルミネーションがチカチカと輝いている。まるで、星が降ってきたかのようだ。寒い中出てきたかいがあるってもんだ。寒いの苦手な僕はめっちゃ厚着してる。
「うん、とっても綺麗ね」
隣でマイが相槌を打つ。相変わらずマイは薄着だ。ファッションは我慢よとか言ってるけど、僕にはその考えは微塵も分からない。
僕らは今、王都の中央広場を歩いている。進むのが億劫になるくらいの人混み。けど、それも悪く無い。僕の左手はしっかりとマイの右手を握っている。そうしないとすぐにはぐれるからだ。
ちなみにアンとジブルはもうどこに居るかわからない。あいつら小っこいから人混みでは見えなくなってしまう。
広場の中央には大っきなクリスマスツリー。それと教会には魔法の光で幻想的なイルミネーションが施されている。それを見るために家族連れやカップルがしこたま集まっている。
薄暗くなってきて雪も降っている。イルミネーションは綺麗でずっと見てても飽きない。誰か大声を上げてる訳ではないのだけど、ここまで人が集まるとそのざわめきが凄い。なんか豪雨の中にいるみたいだ。
けど、こういうのって逆になんだか寂しさを感じてしまう。ここの人達のように華やかで楽しそうな人もいる反面、孤独で1人で寂しい人もいる。
僕は昔は、勇者たちに虐待されてるか、薄暗いなか1人で居るかのどっちかだった。もっとも妹と一緒に居た時は、貧しいながらも悪くは無かった。
「クリスマスってなんなんだろうな」
僕は今ではマイたちとパーティーしたりプレゼント交換したりとかでクリスマスを楽しんでいるけど、たまにふと、寂しかった時の事が頭をよぎる。僕はマイの手を引いて広場から離れる。
「どうしたのザップ」
マイが手を強く握ってくる。
「いや、昔の事を思い出してね。金持ちの家ではサンタクロースとかプレゼントで楽しそうだったけど、俺は昔はプレゼントとかほとんど貰った事無かったからな」
「あたしもそうよ」
「なんでプレゼントしたりする風習が広がったんだろうな」
孤独が長かったから、なんかクリスマスをシンプルに楽しめない。
「そりゃ、貰ったら嬉しいからよ」
「貰える人はいいけど、貰えない人は寂しいよな」
「そうよね」
いかん、せっかく楽しんでたのに、なんか暗い事言っちまった。そして目的地に着く。ここは国立の孤児院、誰からもプレゼントを貰えない子供達が集まっている。
「偽善かもしれないけど、ここの子供達が寂しく無いように。そして、何人かが大っきくなったら、今日の事を思い出して恵まれない人にプレゼントしてくれたらいいな」
「きっと、きっとそうなるわ」
マイは微笑み離れる。
僕は孤児院の広場に、収納からエルフの森から切り出してきたもみの木で作った巨大ツリーを出す。城の塔よりデカい。それに打ち合わせ通りに妖精たちが飛んで来て枝にとまって体を光らせてイルミネーションになる。
「じゃ、戦闘開始だ」
僕はサンタコスに身を包み、プレゼント袋を手に孤児院へと足を踏み出す。
メリークリスマス!!
皆様が幸せでありますように。
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