森人の国 28
「我こそは、カルバーン帝国皇帝、バルバレス・マクドランであるっ!」
街の入り口に変な奴が、いや、ヤバい奴がいる。知り合いだけど見なかった事にしよう。僕はマイとデルと無かった事にして素振りを続ける。
「我こそは、カルバーン帝国皇帝、バルバレス・マクドランであるっ! この里の代表者はおらんのか?」
変態が何かいってる。最近は結構寒くなってきたのに、裸足に金色のまわし一丁で、入り口でふんぞり返っている。帝国皇帝。確かに帝国皇帝だが、彼を見て誰もそうたとは思わないだろう。一国の皇帝が護衛も何も無く、しかも半裸で他の国の入り口に立っている。ここが王国なら投獄されてるぞ。マイとデルがこっちを見るが、僕は首を横に振る。あのおバカには自分でなんとかして貰おう。関わったら負けだ。
「おい、そこに居るのはザップ・グッドフェローじゃないか? お前の親友のバルだ。案内してくれよ」
「ザップー、ご指名よ」
マイが変態を見ている。見るな見るな。
「俺にバルなんて知り合いは居ない」
僕は見ずに言い放つ。
「ほう、もしかして照れてるのか?」
皇帝が近づいてくる。寒い中まわしでやって来るなんて気合い入りすぎだろう。脳筋、いや、ちょっと違うな。
「ところで、あなたはどなたですか?」
「だから言ってるだろ。お前の親友の帝国皇帝バルだ」
「最近そういう冗談が流行ってるのですか?」
「おいおい、冗談じゃねーよ。そっかお前がそう言うのならこっちにも考えがある。お前が大好きなドラゴンになってやろうか?」
なんかこの皇帝は、神竜王ゴルドランと融合してて、金色のでっかいドラゴンに変身出来るという特技をもつ。さすがにこんな所でドラゴンになられるとこの里が滅茶苦茶になっちまう。けど、コイツの空気読めなさ、わがままっぷりは折り紙つきだ。やると言ったら、やりやがる。
「まて、まてぃ。分かったから、ドラゴンだけは止めてくれ。ほら、多分、ここのエルフ達と揉める事になるぞ」
「そうか? 俺が来たのに誰も出迎えない方がおかしくないか?」
「おいおい、自分をよく見ろよ。一国の最高責任者がそんな格好で来るとは誰も思わんだろ。逆にお前の城にまわし一丁のエルフが来たらどう思う?」
「そりゃそうだな。そういう奴が来たら城からつまみ出す。少しはっちゃけ過ぎたか。でも、ここではこの格好が当たり前なんだろう?」
「もっと調べてから来い。ほら、誰ひとりまわしつけてる奴なんか居ないだろ」
遠くで見てるエルフ達を指差す。居住区の方からエルフがチラホラやって来てこっちを見ている。それに気を良くしたのか、皇帝は広場の前の土俵に上がる。そして、またデカい声を出す。
「我こそは帝国皇帝。全てにおいて帝国が最強という事を知らしめるためにここに来たーっ!」
皇帝は豪快に四股を踏む。この時点で、誰もコイツが皇帝って信じないだろう。
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