森人の国 27
「せいっ! せいっ!」
僕は愛用のハンマーを素振りしている。昨日はあの後普通にデル家に帰って寝た。残念……
そして朝起きて日課の素振りを旧地区の広場でやっている。
まずは振り下ろしから、袈裟懸け、逆の横薙ぎ、逆袈裟、かち上げという風に僕から見て逆時計回りに進行させていく。そして、一巡したら、今度は構えを逆の右足前にして、左手を起点に同じ事をする。そして、次はこのまま右手を起点に一週。そして、最後は左足前で左手を起点に一週。完全我流だが、多分これでハンマーでの基本的な振りは全てだろう。あと考えられるのは突きだけど、これは殴るものが無いと動いて場所を取るので、広いとこや殴るものがある時に練習してる。
余談だけど、僕の通常の構え、左足前だと普通に右手を起点に振る時には体重が乗って威力が上がる。剣でもパンチでも、この構えで後ろ足から前足に重心移動させて自分の体重を乗せる事でやっと威力が出る。重心移動無しで振ってる剣は手だけの剣って言われていて簡単に弾かれる。ハンマーはそれと違って自重があるからその手だけの攻撃でも威力を出せるのが長所の一つだ。
それと逆に右利きの僕が右足を前に構えると、腕の可動範囲も狭まり、かつ重心移動での威力が乗らないので振りにくくなる。けど、力が入り辛くなるのはデメリットばかりではなく、振りが早くなる。ボクシングのジャブのようなもんだ。だから僕は戦いで様子見の一撃は右足を踏み込んでからの袈裟切りの反対の左袈裟や横薙ぎや左逆袈裟から繋げて行く事が多い。すぐに出せるからだ。
ハンマーを振り続けて一ヶ月くらいで無駄なく振れるようになった。それからずっと続けてる。それで上達は大してしてないと思うんだけど、多分これを止めると必要な筋肉が衰えて今みたいには自然に振れなくなるだろう。誰にでも不器用でも使い易いと言うことで使い始めたハンマーだけど、奥が深すぎる。様々な全身の筋肉を鍛えてないと、単純な攻撃しか出来なくなる。一番メジャーな振り下ろしは大地がハンマーを受け止めてくれるが、他の振り方は全てスカるとその重さで武器が流れる。それを回転とかで流して次の攻撃に繋げるか、力で押し込めて繋げるかしかない。要はしなやかな筋肉が必要なのだ。剣とか槍なら素振りを少しサボってもそこまで変わらないだろう。けど、ハンマーは違う。一日サボるだけで、何か違和感が出る。一番楽に使えそうな武器が、使いこなすには一番手間がかかるって、矛盾だな。なんか人生みたいだ。誰でも楽になれて自由に見える冒険者がとても大変みたいに。
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