森人の国 22
広いエントランスを通って、デル父に聞いた通りに建物を出て渡り廊下をすすむ。ここからは気が効いていて、通ると魔法の灯りが点くようになっている。明日からの宿泊客のためにメンテナンスしたばかりで、僕ら以外は誰も居ない。なんか綺麗にしたばっかのとこを使うって贅沢な気分だ。渡り廊下も木で出来ていてその良い香りがする。背の低い木に囲まれていて、ここも森感がすごい。そして、別館に入ると硫黄の匂いがする。ここのお湯は地下からくみ上げてそれを魔法で適温に温めて浴槽に流しているそうだ。ロビーの先には男湯女湯の入り口がある。露天風呂だから期待したけど、さすがに混浴の訳無いか。
「ザップ、また後でね」
少しほっとして、少し残念に思いながら、のれんをくぐる。脱衣所があるが、僕は収納があるから直接服を収納に入れて裸で進む。脱衣所の扉から出ると、そこは岩に囲まれた露天風呂。つい、ため息が漏れる。魔法の灯りに少し濁ったお湯が照らされている。ドラゴンの形をした岩の彫刻の口からお湯が勢いよく噴き出していてその水音が心地よい。置いてあったタライで体の汚れを落とし浴槽に入る。
「おおおおーっ」
つい声が漏れる。少し熱いくらいで、僕にはちょうど良い温度だ。右手は大きな岩がゴロゴロしていて、左手は木々に覆われている。そして木々の合間からは木の柵が見える目隠しになってるんだろう。
温泉最高。それしか言葉が思い浮かばない。泳げないカナヅチな僕だけど、お湯に浸かるのは嫌いじゃない。足がつかない水に入るのが嫌なだけだ。なんか吸い込まれそうで怖い。
なんかここのお湯はやたら暖かく感じる。手足の先がポカポカする。硫黄のような匂いを感じたけど、もしかしたら他に何か入ってるのかもしれない。魔法的な何かかなー。
「ザップー、聞こえるー?」
マイの声た。隣の岩山の奥からする。この岩山が隣の女湯との仕切りになってるのか。という事は登ればあっちに行ける? イカンイカン覗きは犯罪だ。
「ああ、いい湯だな」
当たり障りの無い事しか言えない。この岩山の隣には裸のマイが居ると思うだけでドキドキする。ただ声がするだけでなんかいいな。
「ザップー」
ん、声が上から?
なんとマイが岩山の上から顔を出している。なんと逆に覗かれるとは……
マイはしっかりとタオルを巻いている。それが見られただけでなんか眼福だ。
ゴゴゴゴゴッ!
なんか岩山がきしんでる。なんだ? 幾つかの岩が浮いている。
「マイ、すぐに降りろ!」
僕は声を張る。
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