荷物持ちの記憶
「あ、ああああーっ」
頭の中にいろんな情景が浮かび、耐えられなくなり、僕はベッドに倒れ込む。
「な、なんだ」
僕は目の前が真っ白になっていった……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「役立たずのクソ野郎!お前を『ゴールデンウィンド』から追放する!」
金髪の男が僕の腹を蹴りつける。
「そうね、この魔法の収納の袋があれば、ザップはもう要らないわね!」
意地悪そうな、凹凸の激しい女性が僕を杖でつつく。
「魔法の袋は飯も食わなければ報酬も払わなくていいからな!それに守ってやる必要も無い。今まで以上に探索がはかどるな!」
金髪の男が僕に唾をはきかける。
「契約解除だな!おい!ザップ!俺たちの荷物を全部出せ!」
禿頭巨漢が僕の頭に鉄拳を下した。
「四の五の抜かすな!全部だせよ!」
神官服の女性が僕を蹴る。
「役立たずのクソ野郎!達者で暮らせよ!」
金髪の男性は僕に背を向ける。その腕に女性2人がしがみつく。
「じゃあな!無事に戻ってきたら一杯奢ってやるよ!」
禿頭巨漢も僕に背を向ける。
「待ってくれ!置いて行かないでくれ!」
僕は叫んだ。
「触るなよ!カス野郎!」
禿頭巨漢は激しく僕を殴りつけた。
僕はたたらをふみ、口を開けた真っ黒な穴に足を滑らせる。
「ウァアアアアアアッ!」
僕は穴の中に吸い込まれていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「はぁ、はぁ…」
僕は肩で息をつく。なんなんだ?
僕は穴につきおとされた。ザップの記憶?
ひどい。ザップは仲間に捨てられて殺されかけたんだ。
また、頭の中に何かが飛び込んでくる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「待って下さい!あなた言葉がわかるんでしょ?」
石の通路を歩いている僕の後ろを、少女がついてくる。猫耳で大きな荷物をもっている。そうだ、僕の収納の中で石になっていた女性の1人だ。
「あなた、お腹がすいてるのね、まってて、せめて助けて貰ったお礼に食事をごちそうするわ」
情景が代わり、さっきの少女が荷物を下ろし色々出し始める。
「これだけしかないけど、冷める前にどうぞ」
僕は少女からスープを貰って飲み始める。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「では、新しいご主人様、しばらくの間よろしくお願いします」
また、情景が代わり、僕の前にいる角の生えた少女が膝をついて頭をさげる。この少女も知っている。僕の収納の中で石になっていたもう1人だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「フーッ、フーッ…」
僕は頭をおさえて、ゆっくりと息をつく。
「え、ラパン、大丈夫?」
「うん、大丈夫。もう大丈夫」
僕は今見たものをミネアに話す。
「最初の記憶は『ゴールデン・ウィンド』のうんこ野郎ね、最低の奴らでザップにきっついお仕置きされたってマイに聞いたわ。次の猫耳はマイ、角が生えてるのはアンよ。多分2人との初対面とかだとおもうわ」
「なんで今思い出したんだろう?」
「多分ね、ザップの心が思い出して欲しかったんじゃない?」
そっか、ザップが思い出して欲しかったのか。
僕は軽く頭を振って立ち上がる。
『強くなれ!2人を頼む!』
なんか、ザップが僕にそう言ってような気がした。