森人の国 12
「何言ってるの? なんであたしがデルと相撲とらないといけないのよ! そもそも、あたしには何のメリットも無いわ」
とか言いながらもマイは立ち上がっている。なんだかんだで、マイも力比べ系は好きだ。押したら靡くんじゃないか?
デルがマイを見ながら拡声器を口の前に持ってくる。
「いえ、メリットはあります。私を倒したら、今期のこの里の最強の力士の称号『横綱』という敬称を手に入れる事ができます」
「そんなの要らないわ。何のメリットがあるの?」
「最強。それは誰もが求める素晴らしい称号です。今、マイさんの二つ名は『首狩り』という、物騒なものです。それが私に勝ったら、『大横綱マイ』って呼ばれる事になるでしょう」
「ナニソレ、悪口? 『大横綱マイ』って、なんかめっちゃちゃんこ鍋食べたりする大食いの人か、女の子なのに、まわしで戦いまくる羞恥心無い人みたいじゃないの」
うん、『大横綱マイ』、なんとも言えないな。男の僕ですら『大横綱ザップ』とか呼ばれるのは抵抗がある。
「はいはい、マイ姉様、メリットならありますよ」
ドラゴン娘アンが手を上げる。
「優勝したら、デルを貰えるそうじゃないですか。お嫁さんゲットですよ」
「余計、戦うメリット無いわ!」
マイはやる気を失って座り込む。
「それなら、この里に伝わる素晴らしい魔道具をつけよう!」
復活したデル父が、マイに話しかける。
「どんなものなのか、内容次第ね」
「『剛力のまわし』。装備したら、筋肉が付きやすくなる」
「要らないわっ! 相撲なんかに関わりたくないわ。もう、帰る」
あ、マイ、かなりおこだ。立ち上がってござから降りて靴を履き、居住区の方に向かおうとする。
「逃げるのですか?」
デルが拡声器でマイの方に話しかける。あ、それ、まずいと思うよ。マイ、かなり不機嫌だから。
「逃げる? 誰が? どうして?」
マイがデルに振り返る。更にマイが低い声を出す。
「あたしが、最近怒らないからって、みんなちょっと調子乗ってるんじゃないの? 相撲? なにそれ、首、切り落としていいの? しょうがないわね。たまには本気出したげるわ」
マイはそう言うと、ゆっくり靴と靴下を脱ぐ。土俵は土足厳禁だもんな。そして、それを収納に入れると、歩き出して土俵に上がる。マイとデルは睨み合う。
「あんたのルールに合わせてあげるわよ」
マイは土俵で立ち会いのポーズを取る。やっぱ相撲は女の子がやるもんじゃないな。今日のマイはショートパンツにシャツだけど、足開いて前かがみのそのスタイルは刺激的すぎる。
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