森人の国 3
「それってどういう事?」
マイがデルに尋ねる。
「身内の話で恥ずかしいですが」
デルは顔を伏せる。
「私の父は、私と違って強さのみ追い求めてるんです。要は超格闘バカ」
お前と一緒だよ! 僕はその言葉を飲み込む。マイを見ると肯いている。マイも耐えたんだな。
「それで、今度の相撲大会のアルティメットの部で優勝した者に私を嫁入りさせるって事を言い出したんです」
「おめでとう! 良かったな。これで結婚できるじゃねーか」
僕はつい即答する。デル達4人はいっつも彼氏出来なーい、彼氏できなーいって嘆いている。これで、デルは友人達から羨まれる事だろう。
「何言ってるんですか? ザップさん。そんなの嫌ですよ。そんな知らない人と結婚なんて無理です」
「お前良く、強い男を彼氏にしたいって言ってたじゃねーか。その結婚条件に、お前と戦って勝つっていうのを入れたら問題ないんじゃねーか?」
「何言ってるんですか? 私は強さだけじゃなくて、若干はその、なんて言うか、見た目、雰囲気とかも大事にしてるんですよ。ザップさんは、強いからって理由でドラゴンと結婚したいと思います?」
アンが自分を親指で指す。いつの間にか戻ってきている。僕はアンを見つめる。
「無いな……」
「何言ってるんですかー。ご主人様。強くて可愛いくて、なんでもそつなくこなす。こんないい嫁候補いないでしょ!」
「すぐに裸になろうとする。いや、なってる。底なしに食べる。何でも食べる。岩や土さえも食べる。お前、普通の人間はみんな俺と同じ考えに至ると思うぞ」
「ううううーっ。そう言えばそうかもです。そう言えば、古竜仲間の誰1人彼氏彼女居ないですもんねー。しょうが無いです。竜は孤独な生き物ですから……」
「おい、滅入るな。言っただろ。俺が生きてる間はずっと、お前にひもじい思いはさせないって。彼氏かどうかは置いといて、俺はお前の家族のようなもんだ。孤独じゃない。それに仲間も沢山いるだろ」
「そうですね」
アンが微笑む。いかん、今、コイツを少し可愛いなって思ってしまった。
「イチャついてる所申し訳ないですが、要は私は強いってだけじゃ、結婚は難しいんですよ」
デルがジト目で僕を見ている。
「イチャついてない! 主従関係の確認だよ。じゃ、聞くが、どういう男がお前はいいんだ?」
「それはあたしも興味あるわ」
マイが身を乗り出してくる。
「そうですね。別にイケメンじゃなくてもいいんですが、当然強くて、頼り甲斐があって、弱いものにも優しくて……」
ん、マイがこっちを不機嫌そうに見てる。どうしたんだ。
「面倒見がいい。そんなとこですかね?」
「デル、あたしに喧嘩売ってるのね。表に出なさい」
マイがユラリと立ち上がる。
「いいですよ。私は前よりもっと強くなりましたよ」
デルが音を立てず立ち上がる。
「楽しそうですね。下克上って奴ですね」
アンは嬉しそうに両手を合わせている。
「アン、煽るな。どうしたんだ? 訳が分かんない。2人とも座れ座れ」
何故か2人はキッと僕を睨むと音を立てて座る。不機嫌なのか?
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