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第二話 荷物持ち生き延びる

 だいたい1000字から2000字くらいで、話が進んでいきますので、気楽に読んでいただけたら幸いです。


「ウワァァアアアアアーッ!」


 僕は背中から虚空に吸い込まれていく。浮遊感が体を襲う。手足を動かすが何も触れない。落とし穴の入り口だった光が、みるみる小さくなり見えなくなっていく。闇の中、上下の感覚が無くなってくる。嫌だ! こんな所で死にたくない! そうだ、せめて頭から落ちるのだけは避けよう。手を頭の後ろで組んで首を丸める。落ちて打ち所が良かったら、即死は避けられるかもしれない。

 どんどん加速していく。ああ、もう駄目だ……


 これはもう助からないな……




 昔の事を目まぐるしく思い出す。死んだ優しかった両親の事、遠くに残して来た妹の事。こんな事になるなら冒険者になんてなるんじゃ無かった。

 畑仕事や建築の手伝いとかして日銭を稼ぐ生活の方がまだましだったな。


 死にたくない! 


 そう思いながら、僕は意識を手放した。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ゲホッ! ゲホゲホッ!」


 僕は水を吐き出しながら起き上がる。



 生きてる!



 死んでない!



 良かった。なんでかは分からないけど、僕は助かったんだ……


 ぼんやりとした頭で辺りを見渡す。




 僕は浅い泉の中にいた。


 泉の中央には華麗な装飾が施された噴水があり、水を吹き上げている。どうも石造りの小部屋にいるようだ。窓が無い事が迷宮にいる事を思い出させた。


 壁には一定間隔おきに燭台(しょくだい)があり、蝋燭ろうそくの火が辺りを煌々(こうこう)と照らしている。


 上を見るとぼんやりと僕が落ちてきた落とし穴が見える。



 おかしい……



 僕は何で生きている?


 かなりの距離落ちてきたはず?


 立ち上がって体を確認するが、どこも異常は無い。むしろ、いつになく体調も気分もいい。


 泉から出ると瞬時に服の水が乾く。


 え、この泉の液体は水ではないのか?


 (かたわ)らに小さな石碑(せきひ)があるのに気付き、その文章を読む。良かった。共通語だ。僕にも読める。


『エリクサーの泉、戦いの前に全てを癒やすがいい』



 エリクサー?



 エリクサーとは確か、たちまちにしてどんな怪我も毒も癒やす最高クラスの霊薬(れいやく)のはず。

 何でこんなものがここにあるのか解らないけど、運良くエリクサーの泉に落ちたおかげで、多分僕は死にかけてたのに回復したのだろう。

 いや、運良くなどという都合がいい事があるはずがない。罠に落ちたら、この泉に落ちるようになっていたのだろう。


 石碑の文章を信じるなら、この先にいる何者かと万全な状態で戦わせるために。


 僕は魔法の収納にエリクサーを入れてみた。良かった。入れられる。


 そして、不確かな足取りで壁に近づく。


「あつっ!」


 蝋燭で指の先を炙る。火傷した指先に収納から出したエリクサーをかけてみる。瞬時にして治癒した。


 凄い!


 凄すぎる!


 僕は噴水から溢れるエリクサーを収納に入れ続けた。

 僕の魔法の収納は入れたものを頭に思い浮かべるだけで手の届く範囲内で出し入れ出来る。

 構造がどうなってるかわかんない。けど、分けて入れる事が出来て、入れてる間は時間が止まっているのか経時劣化しない。

 よく考えたらかなり高性能で、冒険者なんかしなくてもこれでかなり稼ぐ事ができたのではないだろうか? けど、今はもう後の祭りだ。


 かなりの時間、僕はエリクサーを入れ続けた。


 これでどんな強力な敵が現れても、一撃で死なない限り回復して逃げられるのではないのだろうか?


 この部屋には対角線上に2つの出入り口がある。どちらも同じ様な扉がついている。

 僕は、危険なのはどちらも一緒だろうと思って適当に1つを選んで扉をくぐる。


 エリクサーで魔力が回復するとザップは言ってましたが、魔力は今後回復してないので、修正しました。2022,5,30

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